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Meister Interview 吉原 義人(Yoshihara Yoshindo )

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刀鍛冶/日本刀鍛錬道場代表 吉原 義人

刀鍛冶/日本刀鍛錬道場代表
吉原 義人

  • 吉原義人プロフィール
  • ダイジェスト版(読了時間5分)
  • 記事全文(読了時間15分)

刀鍛冶になるために必要なことは?


Q:1人前の刀鍛冶になるための課題は?

具体的な課題はない。
とにかく目で見て体で覚える。

だいたい、日本刀として形になる作品が創れるまで15年って言われているけど、それは人それぞれ。 15年かかってもダメな人はダメだし、上手な人は5年である程度できるようになる。
刀鍛冶に入ってから最初にやらされることは炭を切ることからで、「炭きり3年」って言葉を聞いたことないか? 日本刀の鍛錬に使う松の炭を、鉄や鋼に火が回りやすいように、細かく使いやすい大きさに切る仕事だ。その「炭切り」しているのをとにかく見て、そのうち手伝わせてもらえるようになって、少しずつ覚えていく。最初からは、なかなか叩かせてもらえないんだよ。

まあ、うちは早い方で1~2年ほど「炭きり」をやると、「先手」っていうのをやらせてもらえる。親方が鉄を赤くして、金敷きって台の上に置く。それを指示に従って、呼吸を合わせて、親方が鉄を伸ばしたり、ひん曲げたりしているところを、相方として叩くんだよ。後はとにかく目で見て体で覚えるのみだ。具体的な課題なんていうのはないんだよ。 毎日毎日、親方がやっていることを真剣に見て、「先手」としてやって、少しづつ体で覚えてく訳だ。人がいないときに練習するなんて話もあるかも知れないけど、刀鍛冶だって、大工だって、板前だってさ、「勉強のため」なんて理由で材料は使わせてもらえない。どんな仕事でも素材は大事で、お金がかかるわけだから、やっぱり一生懸命親方を手伝いながら、見て必死で覚えるしかないんだよ。

Q:一流の刀鍛冶に必要なスキルは?

腕はもちろん重要なのはセンス、心構えもセンスのうち

やっぱり基本的にはセンスだね。鍛冶屋の腕ももちろんだけど、日本刀は芸術品だから、美しさに対するその人のセンスが一番大事。センスにもいろいろあってね、日本刀の形の良さを見極めるセンス、鉄の質を見極めるセンス、それから刀に波紋を入れていくセンスもある。それに鞘(さや)、鍔(つば)、柄(つか)などその全部のその美しさに対するセンスが重要なんだな。腕(技術)はそれを形にできるために絶対に必要なスキルだから、その2つが一番大事だな。それと、心構えも大事だ。それもセンスのうちっていうか、技術やセンスと心構えは別だって人もいるけど、職人としての探究心とかはもちろん必要な要素だ。

Q:日本刀の価値はどこで決まるか?

大事なのは全体のバランス。
いつも納得がいくまで鍛錬することが重要

日本刀の価値を決める要素はたくさんあって、どれか一つじゃダメなんだよ。まずは素材の選び方。「地金」っていうんだけど、刀鍛冶は材料である「鋼」を作るところから、鍛錬、仕上げまでほとんど全部の工程を自分でやるからね。「地金」がよくて、鍛錬の仕方がよくて、「形」がよくて、それにあったいい形の波紋が入っていて、日本刀として全体のバランスが取れているのが「いい刀」だ。いつも納得がいくまで鍛錬することが重要だね。
これまで刀鍛冶をやってきて、その時のキャリアで技術やセンスの差はあったかもしれないけど、自分が納得するまで鍛錬したものでないと、完成させることは出来ないんだよ。 なかには「これでいいか」とか、「今回は少しよくできたかな?」とかで、納得しちゃう人がいるかもしれないけど、俺はいつも納得するまで鍛錬する。まあ、出来上がりがいつも必ず一緒かって聞かれると、人がやる仕事だから、多少は違ってくるだろうけど、そういうのがまた面白いんだな。

Q:‟ものづくり‟の機械化について

日本刀は芸術品。機械で作れる芸術品はない。

日本の製造業は元々、職人達が支えてきたわけだけど、最近ではどんどん機械化されているよな。
刀剣業界は基本、みんな「手作り」だから、完全に機械化っていうのは、おそらく今後もできない。
でも、「先手」として叩く作業とか、一部のことは機械化している鍛冶さんもいるんだよ。うちはお弟子さんたちがいるから、「先手」として叩くのもぜんぶ手で叩いてやっているわけだけど、1人でやっている刀鍛冶さんは全部を一人では叩けないからね。「機械ハンマー」を使ってやっているんだよ。そういうところはしょうがないと思うけど、やっぱり基本的には手でやらなくちゃね。特に日本刀を創るってことは、芸術品をつくるわけだから、やっぱり「手作り」を基本として残さなきゃならないよな。芸術品を機械で作るってイメージは出来ないだろ?

そもそも手作りの基本っていうのが、俺たちが子供のころにはあった。小学校で、鉛筆なんて、みんなカッターを使って手で削るのが当たり前だったけど、今はみんな機械。そもそもシャーペンとかに変わって、鉛筆を使う子自体が少なくなってきているしね。「刃物は危ない」って、子供に使わせなくなっちゃう。刃物だけじゃなくて、彫刻刀とか、いろんな道具を使うことができない子ばっかりになっちゃうんじゃないかって、正直心配だよ。 たまに手を切ったりして、痛い思いをしたりして、使い方もわかってきて、手先も器用になっていくんだな。 「刃物は危ない」って、なんでもやらせなくなっちゃうと、もともと日本人が得意だった手先の器用さや、手先の仕事の基本がなくなっちゃうよ。そういうのが一番心配だな。