top > Meister Interview > サーフィンフォトグラファー/U-SKE

Meister Interview 吉原 義人(Yoshihara Yoshindo )

  • share this page:
  • twitter

サーフィンフォトグラファー/U-SKE

サーフィンフォトグラファー
U-SKE

  • U-SKEプロフィール
  • ダイジェスト版(読了時間5分)
  • 記事全文(読了時間15分)

仕事のリスクとセンス


Q:ケガをすることもある?

ケガしてしまうことはどうしてもある。 いい波が立つポイントは、海底がリーフ(岩礁やサンゴ礁)であることが多いし、波のサイズが大きいわりに海底までの深さがすごく浅いこともある。自分の身長の何倍ものサイズがある波では、波が早いし、巻く力もものすごく強い。パイプラインの深いところで、粘り過ぎていると、気付いたら体ごと持っていかれてしまう。
海底に激突して、リーフで体中を切ったり、鼻の骨を折ってしまったこともある。 経験と共にケガが少なくなるということもあるし、ケガをせずに、スマートに撮る方がプロとしてかっこいいので、可能な限り避けるべきだが、ギリギリの瞬間を狙っている以上は、覚悟が必要と受け入れている。 ただ、どこまでが自分の限界かを見極めることが重要で、「俺はここまで攻めている!」という、特攻自慢的なモチベーションは持たないようにしている。

Q:海に入る前に撮る画をイメージしている?

理想の画をいつもイメージしている。 今日はこんな光の加減で、こんな角度からの画を撮る!と、その日撮りたい画のイメージを明確に決めてから、その画が撮れる時間と場所を狙って海に入る。朝日の光の角度を使った写真を撮りたいときは、日の出からのわずかな時間を狙って、夜明け前から海の中で波を待つ。季節ごとに日が昇る時間も、角度も違うため、狙いをつけて、理想の波を待っている。

Q:いい画を撮るために必要なことは?技術?忍耐?運?

十分な準備と行動力、あとは勘と運だと思う。 気候や海の情報は、気象予報や波情報から誰でも手に入るが、それぞれのポイントの地形や、潮回りと共に変化する波の特性などの深い情報は、地元の人でしか知りえない情報でそれが貴重。さまざまなポイントで、そういったレアな情報網を持ち、それを活用するための事前準備と、行動力を持つことが重要。 それでも、実際にいい画が撮れるかどうかは、経験からくる勘や運に頼るところが大きい。
光の向きによって水の色は変わるし、潮の流れや、風の向き、うねりの大きさ、同じ海でもすべてがいつもと違う。その時のたまたまの光の反射具合、その時にたまたま立った水しぶき、その時にたまたま飛んでいた鳥、その時の泡がたまたま美しかった。自分が持つカメラのレンズに、そんな“自然”のフィルターがかかって、さらにいろんな” 偶然 “が重なって、自分で狙っていた以上の奇跡の瞬間を切り取れることがある。その時は心から自然に感謝をするし、その感覚を味わってしまうと、もうやめられない。

Q:サーフィンフォトグラファーは、皆サーフィンをやっている?

サーフィンをやることが波の形や特性を理解しやすいし、いい画を撮る勘が働くと思うので、ほとんどのカメラマンがサーフィンを経験している。やっていない人も、プロサーファーからのアドバイスなどを聞き入れて活かしていると思う。波の写真を撮るセオリーはあるが、プロはみんなオリジナリティを追求していて、中にはボディボードに乗って撮っているなど、撮影手法にも活かしている。

自然のリズムと共にスケジュールを決める。


Q:海外での長期滞在時はどうやって暮らしている?

海外に長期滞在する時は知り合いの家に間借りして住んでいることが多い。「ガレージが空いているから、好きに使っていいぞ」とか。「離れ小屋の中を整理すれば、そこに住んでいいぞ」など。ふつうに住環境として考えると、快適とは言えないかもしれないけど、自分にとっては非常に良い環境。

これは海外でも日本でもやっているけど、「朝のパトロール」といって、夜明け前に30~40分くらい自転車で海を見に行き、1日のスケジュールを決める。朝の光が特に好きだから、基本毎朝撮りに行っている。 波がなくても、朝日とマッチングして、素晴らしい画が撮れる時もある。その後、1~2時間程度サーフィンも楽しんだりする時もある。笑。海から帰ってきたあと、ヨガをやって精神統一をする。自然のリズムと共にスケジュールを決めて、それに沿って過ごすことができるので、これ以上の環境はない。波がでかければ、1日中海で撮影し、波が来なければ、1日中ガレージにこもってデスクワークをする、といったように自然に合わせて行動を決める。

Q:仕事として考えたとき、今はどんな活動を?

仕事での撮影依頼もいただくが、今は自らやる展示会や個展が中心で、それ以外は可能な限りフリーに活動するようにしている。フリーなスタンスを重視しているのは、仕事に時間を縛られて、何年に一度しか撮れない素晴らしい画を取り逃がしたくないから。今は一生の財産になるような、素晴らしい画を残すことが自分の役割だと思っているし、そういった理由から、仕事を受ける時も、可能な限りスケジュールには猶予を持たせていただくようにしている。 365日、気持ちはいつでもスタンバイの状態。ハワイでも2~3か月間もいて、いい画が撮れる日は限られているから、その濃縮された何時間かを仕事を理由に失うことだけはしたくない。

純粋に残したいと思う画を撮っている。

去年の震災が大きな転機になって、自分が撮りたい写真、残したい画の考え方が変わり、純粋に「いま」を写真に残したいと思うようになった。震災のニュースはハワイで見た。テレビを通して見たのは、自分が何度も足を運んで、地元のサーファーたちと一緒にサーフィンしたり、波の写真を撮っていた福島の海の無残な映像だった。強いショックを受けて、その時に日本にいない自分、行くこともできない自分に、とてもやるせない思いに駆られた。震災のような自然災害によって、あるいは埋め立てなどの人工的な理由によって、背景は違っても、海は、どんどん変化していってしまうこと事をその時に実感して、「いま」の画を残したいと強く思った。
自分の地元である平塚でさえ、親父が持っている小さいころの写真は「いま」と全然違う。大人になると、写真や画で残っていないとその時の「いま」がどんどん忘れられてしまう。だから、自分が年をとったり、死んでしまった後でも残るように「画」として記録を残したい。