top > Meister Interview > 細谷 圭二 プロフィール

Meister Interview 緑 健児(Midori Kenji )

  • share this page:
  • twitter

ホソヤエンタープライズ代表/細谷圭二

ホソヤエンタープライズ代表
細谷圭二

  • 朝霧重治プロフィール
  • ダイジェスト版(読了時間5分)
  • 記事全文(読了時間15分)

まえがき


「真夏の夜のエンターテイメント」と聞けば、日本人なら誰でも「花火」を想像することだろう。
一度見れば、誰もがその美しさと華やかさに酔いしれ、歓喜の声を上げる。そんな風情ある魅力を持つ花火だが、その裏では、「火薬」という危険物を取り扱う張り詰めた環境下で、数千~数万時間にもおよぶ準備期間を経、命に関わる危険と隣り合わせの現場で戦っている人々がいることを想像できるだろうか。花火職人とはそんな仕事である。
日本の花火の歴史は、種子島に火薬が伝来した1543年(天文12年)以降、1613年(慶長18年)にイギリス国王の使者ジョンセリスが駿府城を尋ねた際、持参の花火を見せたのが始まりという説が最も有力で、日本で最初に花火を見た人物は、かの徳川家康とされている。花火を鑑賞する際のおなじみの掛け声である「たまやー!かぎやー!」の、「玉屋」と「鍵屋」の創業も、江戸時代の初期。この「鍵屋」の流れを汲み、創業100年以上の歴史と、日本有数の実績を持つ老舗の花火企業。それが、ホソヤエンタープライズだ。

その4代目を継承する細谷圭二氏の言葉には、花火職人としての厳しさ、誰より花火の魅力に惹かれ、純粋に愛する気持ち、そして何よりも、エンターテイナーとして「人を感動させたい」という強い探究心が感じられた。 安全な場所から花火大会を鑑賞できる立場の筆者にとって、これまで知り得なかった衝撃的な話もあった。毎年花火大会に足を運ばれる方も運ばれたことが無い方も、この記事を通して、さらに花火の魅力を感じていただき、現地でその魅力を体感していただきたい。

株式会社ホソヤエンタープライズ・代表取締役社長:細谷圭二氏インタビュー


Q:花火職人になったきっかけを教えてください

純粋に花火そのものの魅力に惹かれて、この世界に入った。
実家が、明治時代から三代継承されている花火職人だということは、幼少のころから理解していたが、実は大学を卒業するまで「自分が家業を継ぐ」という意思はまったくなかった。その証拠に?大学では経済学部。笑
自分が初めて花火と出会ったのは、22歳の時。親父の手伝いで、初めて打ち上げ花火の現場に連れていかれたことがきっかけで、間近で打ち上げに立ち会った。でっかい花火の玉を筒口に入れたら、「すぐ離れろ。ぐずぐずしていると怪我するぞ!」と言われ、打ち上げてから数秒後、轟音と共に夜空に炸裂する大輪の花。そして、かなたから押し寄せる怒濤のような歓声を聞いた時、興奮で体中が震えた。なぜ、今までこんな面白いことを教えてくれなかったのか?と、本気で親父を恨んだ。今風の言葉で言えば、その瞬間にハマッてしまったということ。そう、たった一発の花火で。

Q:一発の花火を造るのには、どれくらいの時間とコストがかかりますか?

玉の大きさによって大きく異なるが、最も大きい三尺玉だと全工程で半年間かかる。値段は寿司屋ではないが時価になる。我々は個人に対して販売はできないため、花火大会の主催者と、会場の環境や様々な状況を考慮して値段を決める。三尺玉だと玉の重量は280キロにもなり、原価だけでも数十万円、また打ち上げには2トンクラスの台が必要になるため、運搬に必要なトラック、人などの経費も考えると、数百万円のコストが掛かる。職人の立場から言わせてもらうと、三尺玉のような大物を花火大会に出すときは、「娘を嫁に出す」ような気持ちになる。
製造期間だけで半年間もかかるうえ、大きいものは一年間ほど寝かした方が「座り」が良くなり、綺麗な華を咲かせるなんてことも言われるため、思いっきり情が入ってしまう。小さい玉では一人の職人が1日で4~5発程度作れるものもあるが、一度に並行して複数の球を造るのではなく、基本は一発一発、丁寧に造っていく。

Q:花火職人になるための修業について教えてください

玉貼り3年、星掛け5年という言葉がある。修行に入ってすぐにやらされるのは、玉貼りというクラフト紙にのりを付けた紙を、花火の周りに何重にも張っていく作業。花火屋では女性達を中心に行うことが多く、貼り方は縦貼り、横貼り、袈裟貼りなど、様々あるが、丈夫にそして均等に、絶対に花火の中心に水分が入らないように、1枚1枚乾燥させながら丁寧に貼っていく。まずはそれを手早く、こなせるようになってから、星掛けといって、花火に入れる星を造る作業をやる。その後に玉込めといった、花火造りに重要な工程をやらせてもらえるようになっていく。