top > Meister Interview > 鍵井靖章 プロフィール

Meister Interview 緑 健児(Midori Kenji )

  • share this page:
  • twitter

水中写真家/鍵井靖章

水中写真家
鍵井靖章

  • 鍵井 靖章プロフィール
  • ダイジェスト版(読了時間5分)
  • 記事全文(読了時間15分)

まえがき


今回、インタビューをさせてもらった場所は、鍵井さんのいつもの撮影環境とは真逆と言ってもいい、東京銀座のバー。初めて鍵井さんにお会いした率直な印象は、
心身ともに健全な人。
時には危険を伴う、水中写真家という仕事だが、その魅力を本当に楽しそうに、余すところなく語ってくれた。思えば、過去に取材をさせていただいた匠の皆さんからも、同じ印象を受けてきたことを振り返る。そして、匠とはある意味、少年の様に“仕事に熱狂できる才能”を持つ人達であることを再認識することができた。プランクトンからクジラまで、地上では決して会えない生物と対峙している“匠”の話。ぜひご一読いただきたい。

水中写真家 : 鍵井靖章氏へのインタビュー


Q:水中写真家になったきっかっけは?

大学在学中に、のちに僕の師匠となる水中写真家:伊藤勝敏さんの写真展を見たことがきっかけです。
そこで見た写真に深く感銘を受け、そのまま弟子入りをお願いしてしまいました。それまでも趣味程度に、動物園で動物のスナップ写真を撮ったり、自然の中でお花を撮ったりしていましたが、伊藤師匠の写真は、まったくもって異次元でした。水中写真であるにも関わらず、まるで宇宙を感じさせるようなスケール。その衝撃は今でも忘れません。
それと、初めて師匠とお会いした当時、師匠はすでに50代だったにも関わらず、本当に少年のような目をしていたんです。僕が知っている大人達とは、まったく異なる魅力をそこにも感じ、「この人を信じてみよう。」と思いました。当時、僕はまだ大学在学中で、周りの友人が4年生になって、就職活動をしている中、僕は一人、プロの水中写真家を目指すことを決意しました。

Q:プロになるために必要なスキルとはどんなものですか?

高いダイビングスキル、海、生物に対する知識。何よりも重要なのは経験!

プロを目指すなら、まずは高いレベルでのダイビングスキルを身につけること、そのために徹底的に経験を積むことが第一の条件だと思います。次に海について知っておくべきことが大きく2つあります。1つ目は海流。海では突然、強い海流に流され、自分の力では戻ることができない場所まで連れて行かれてしまうことがあります。危険を察知・回避するためには、それぞれの海の海流について正しい知識を持つこと。2つ目は海で生息する生物に対する知識です。被写体となる海中生物達の生態を深く知っておくことで、自ら撮影するチャンスを創り出すことができます。基礎体力ももちろん重要ですが、何よりも重要なのは、この危険回避能力と、撮影機会を自ら創りだす知識・経験です。僕は、写真家でプロになる前に、ダイビングガイドの仕事を5年間やりました。もちろん最初から水中写真家を志してはいたのですが、カメラマンでご飯を食べていくためにも、より海を深く知ることができるガイドの経験はとても役に立ったと思います。

また、撮影現場での話をすると、海での撮影には地元のガイドさんや漁師さんの協力が不可欠です。これはどんな仕事でも重要なことだと思いますが、チームワークやコミュニケーションをいつも大切にしていないと、良い写真は撮れません。だから、周囲で協力してくれる人達との関係を大切にすることはとても重要なんです。僕は海から陸に上がった時には、彼らと楽しく会話をしながら、美味しいお酒を飲む時間を大切にしていますよ。笑

Q:海中の撮影で心がけていることは?

気持ちをフラットに。そして生き物に受け入れてもらえるように立ち居振る舞う。

いつも撮りたい画のイメージはしていますが、実はそんなに深くまでは考えないで、入る前は気持ちをフラットにするよう心掛けています。そうすると、想像以上のシチュエーションに出会えることもあり、その瞬間を逃さないように、シャッターを切ることに集中できるという訳です。また、常に生き物と対話する気持ちでいるようにしています。言い方を変えると、撮影時に、生き物に受け入れて貰えるような気持ち創りや立ち居振る舞いをします。それでも、ほとんどの場合はふられ、嫌われてしまいます(笑)。 それでも、時にすごくいい出会いがある。僕に(魚が)興味をもってくれていることを実感できる瞬間がある。そういう出会いを大切に、魚の気持ちを感じながら撮っています。自然に対して優しい撮影を心がけるという事は、個々の生き物との出会い云々だけではなくて、長いスパンで大事なことと捉えていて、それが僕なりの哲学だと考えています。