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Meister Interview 緑 健児(Midori Kenji )

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水中写真家/鍵井靖章

水中写真家
鍵井 靖章

  • 鍵井 靖章プロフィール
  • ダイジェスト版(読了時間5分)
  • 記事全文(読了時間15分)

プロの仕事道具とは


Q:プロが使う機材はどんなものですか?

自分が思う絵を描いてくれる機種を愛用する!

機材に対して、強いこだわりを持つ人はたくさんいますが、僕の場合は「これじゃなきゃダメ!」という感じではなくて、その時に自分が思うトップクオリティーのカメラを使用しています。重要なのは、私が思う絵を描いてくれること。デジタルカメラを使用するようになってからは、キヤノンEOS5Dのシリーズで、今のメイン機材はEOS5DmarkⅢです。たくさんの色で、描くばかりだけでなく、単色でも描けるように、機材ばかりに強いこだわりを持つことはありません。海中に持ち込め、自由に操れるサイズなども考慮して、選択しています。 照明なども、市場規模が小さい割には、メーカーさんがすごく頑張ってくれていて、年々コンパクトで大光量のストロボが出てきています。海に入るときはカメラ2台、ストロボを4台付けて入るため、どんなシチュエーションにも対応することができます。
体に身に付けるウェットスーツや、足フィレなどは長年の経験から、自分の好きなものが決まっています。ウェットスーツは稼働箇所を多くして、動きやすいようにオーダーメイドしているかな。そして、どんなに暖かい海でも、ウェットスーツは必ず着用するようにしています。なぜかと言うと、強い海流で流されてしまったり、悪天候に見舞われて、漂流してしまう可能性だってあるためです。常に危険回避も仕事のうちと考えるようにしています。
冷たい海の中での撮影は、水温が2、3℃まで落ち込むこともあります。人間が氷水の中で撮影をするようなもので、どれだけ過酷な状況かは想像が付くと思いますが、事前の準備をしっかりすることが可能になります。寒冷地での撮影は中に暖かいインナーをしっかり着込んで、水がまったく入ってこないドライスーツを着て入ります。ただそれだけの準備をしても、撮影が1時間にも及ぶと、指先と足先だけはどうしようもなく、動かなくなってしまいますが。

Q:年間通して、どれくらいの期間を海中で過ごしますか?

一年の約半分、180日強を海中で過ごす!

海上での仕事も増えてきたため、昔よりへりましたが、それでも1年の半分以上は海に入ります。一日の目安は、60分を2~3回潜る感じです。撮影のロケーションは、主にミクロネシア、モルジブ、インドネシア、タイ、ニューカレドニア、葉山などを選んでいます。年間を通して、基本的なルーティンがあって、例えば3月はタイ、4月はモルジブ、といった感じです。それぞれのロケーションで一番良い画が撮れるシーズンを選び、そこに行きます。もちろん、世界中の海に潜るけど、常に新しい所に行くのではなくて、潜り慣れている所を選んで行く事が多いです。それだけその海の事が分かっているから。準備ができるし、いいシチュエーションに出会える可能性も高いというわけです。 でも、それ以外の海にもとても関心があります。これまで遭ったことが無いシチュエーション、目に新鮮な魚たちとの出会いは想像するだけでもわくわくします。それと同時に、自分達が住んでいる街の海、足元にある自然もしっかりと記録したいという思いと両方ですね。

自然と向き合う心構え


Q:海中の撮影で心がけていることは?

気持ちをフラットに。そして生き物に受け入れてもらえるように立ち居振る舞う。

いつも撮りたい画のイメージはしていますが、実はそんなに深くまでは考えないで、入る前は気持ちをフラットにするよう心掛けています。そうすると、想像以上のシチュエーションに出会えることもあるため、その瞬間を逃さないように、シャッターを切ることに集中できるという訳です。また、常に生き物と対話する気持ちでいるようにしています。言い方を変えると、撮影時に、生き物に受け入れて貰えるような気持ち創りや立ち居振る舞いをします。それでも、ほとんどの場合はふられ、嫌われてしまいます(笑)。
それでも、時にすごくいい出会いがある。僕に(魚が)興味をもってくれていることを実感できる瞬間がある。そういう出会いを大切に、魚の気持ちを感じながら撮っています。 自然に対して優しい撮影を心がけるという事は、個々の生き物との出会い云々だけではなくて、長いスパンで大事なことと捉えていて、それが僕なりの哲学だと考えています。

Q:改めて水中写真家の魅力を教えてください。

フィールドがいつも海なので、
謙虚な気持ちで居られる。

水中写真家はとても贅沢な仕事だと思います。小さなプランクトンから大きなクジラまで、すべてが僕の被写体であって、地上では出会うことができない生き物たちと出会い、対峙することができる。美しいシチュエーションやスケールの大きな生き物の生態に触れられるので、常に謙虚な気持ちで居られることが何よりも魅力です。もちろん、厳しい自然環境に立たされて、怖さやストレスを感じることもあるけれど、一般の人が抱えているようなストレスとはまったく違う。いつもフィールドが広く大きな海なので、心身共に健全でいられるように思います。