top > Meister Interview > 鍵井靖章 プロフィール

Meister Interview 緑 健児(Midori Kenji )

  • share this page:
  • twitter

水中写真家/鍵井靖章

水中写真家
鍵井 靖章

  • 鍵井 靖章プロフィール
  • ダイジェスト版(読了時間5分)
  • 記事全文(読了時間15分)

コミュニケーションの重要性


Q:撮影中に危険に遭遇したことはありますか?

海中でもっとも怖いのは、仲間とのミスコミュニケーション。

海中での危険と聞くと、多くの人はサメやシャチなど、獰猛な巨大生物との遭遇などを想像すると思いますが、実はそういう事はほとんど起こりません。人間がサメやシャチに襲われたりするのは、本当に稀なケース。獰猛で人食いサメとされている「ホオジロサメ」だって、普通のサメと変わらないです。忘れてはならないのは、海の生物だって、人間が怖いということ。だから、彼らが身の危険を感じなければ、自分から人間に害を及ぼすことはありません。 ただ一度だけ、クジラの撮影で予期していない危ない目に遭ったことがあります。
小笠原で海面から、ハートのようなかわいい形のクジラの尾を撮影して、クジラに近づきすぎてしまたったことがあり、 何トンもあるザトウクジラの尾ヒレに、たたかれそうになってしまいました。まともに食らってしまっていたら、命を落としてしまっていたかも知れません。 また、そのこととは別の話ですが、哺乳類であるザトウクジラは、子供を他の生物から守るという習性があるため、不用意に子供クジラに接近してしまうと、予期しない目に遭う可能性があります。

それと、海中での撮影で気を付けなければならないのは、「深度」です。ブラックアウトといって、濃度の濃い空気を吸うことによって、感覚が麻痺してしまう現象です。夢中に撮影している時にたまに起こるんですが、体内に窒素を取り込みすぎた事によって、極度の窒素酔いになり、高速道路を超スピードで走っている時のように、視界がぎゅっと狭くなったりします。カメラのピントを合わせていたら、急にまるで古い映画のエンディングのように、周囲が黒くなっていくんです。そうなってしまったら、本当はやっては行けない急浮上をします!撮影を続けていたら生命の危険が伴いますからね。

ただ、何よりも怖いのは、船頭さんや撮影スタッフとのミスコミュニケーションです。浮上した場所に船がおらず、潮に流されてしまったりすることも起こり得ます。海の環境は天候などによって、あっと言う間に変わってしまいますので、少しのミスコミュニケーションが命の危険に関わることもあります。自然を相手にしているので何が起こるかはわからないですが、そういった事故が起きないように、事前の準備とコミュニケーションをしっかり行うことが重要です。

Q:約20年間におよぶキャリアで、海の変化を感じますか?

我々が知るのは海のごく一部だが、良い方向に行っているとは、まったく思えない。

その年によって透明度が低いとか、水温が異常だとか、珊瑚が少なくなっていくとか、色々な話を聞きます。 確かに珊瑚が全く見られなくなってしまった場所もあるが、10年経ったら再生してきている所だってある。地球温暖化も一つの要因かも知れませんが、一概にそれを「海の変化」とは言えないと思う。何しろ、広い海の中で、僕らが潜っているエリアなんて、本当に限られていますから。地球儀で見たら、陸からちょっと離れた所までしか見ていない。その中で僕が「海の変化」についてコメントするのは、少しおこがましい気がします。

ただ、ひとつはっきり言えることは、「良い方向に行っているとは、全く思えない」という事です。

珊瑚の減少については、確実に水質汚染、つまり人災でしょう。きれいな海近の街であるのにも関わらず、街角にはすごい量のゴミが積まれていて、残念ながら、平気でゴミを海に捨ててしまう人もいる。リゾート施設がゴミを処理しきれなくて、夜中に沖合の深い所にゴミを捨てに行くなど、耳を疑うような話さえある。そういったモラルの低さも、確実に原因の一つであると考えています。すごく残念なことで、意識を変えなければいけません。