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Meister Interview 西 陽一郎(Yoichiro Nishi)

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西酒造株式会社 八代目代表取締役/西陽一郎

西酒造株式会社 八代目代表取締役
西 陽一郎

  • 西 陽一郎プロフィール
  • ダイジェスト版(読了時間5分)
  • 記事全文(読了時間15分)

西酒造株式会社 八代目代表取締役 西 陽一郎


銭金じゃない、本気のモノづくり。
結果は必ず付いてくる。

お酒好きでなくとも、「焼酎ブーム」を記憶している人は多いことだろう。具体的にいつのタイミングがブームだったのか諸説あるが、焼酎の消費量は国税庁(※)が統計を開始した昭和45年以降、実は10年単位で増え続けている。昭和45年当初は「日本酒(清酒)」消費量の13%程度(20.2万キロリットル)にすぎなかったが、昭和55年には23.8万キロリットル、そのさらに10年後の平成元年には49.2万キロリットルと倍増。平成15年には92.2万キロリットルとさらに倍増し、この時点で日本酒(清酒)の消費量を超えた。日本人のアルコール全体の消費量は平成8年がピークで、それ以降は人口減少や高齢化社会の進展などを背景に減少しているが、焼酎の消費量は平成19年まで増加を続け、現在も多くの日本人に親しまれている。 この事実からもわかる通り、焼酎は「ブーム」などではなく、もはや日本人に定着した「文化」であると言えよう。

※平成24年発表:国税庁統計年報書「酒類販売(消費)数量の推移
http://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/shiori-gaikyo/shiori/2012/pdf/006.pdf

昭和48年生まれの筆者も、20代の頃から習慣的に焼酎を飲んできた。 上司や先輩に、焼酎の飲み方や美味しさを教えてもらい、次第に舌は肥えていく。「本格焼酎」と呼ばれる人気銘柄や、少量製造のため入手が困難な銘柄を探し求めて、焼酎バーや居酒屋、またこだわりの九州料理のお店などに競って通った。今でもその習慣は続いている。

今回取材をさせていただいた西陽一郎氏は、焼酎の本場、鹿児島県で約170年の歴史を持つ老舗企業:西酒造株式会社の八代目。本格焼酎ファンから絶大な人気を誇る「富乃宝山」「吉兆宝山」など宝山シリーズの生みの親だ。焼酎ファンであれば知っている方も多いことだろう。焼酎好きで宝山シリーズのファンでもある筆者が、幸運にも仕事で鹿児島にご縁ができ、そのチャンスに賭けて取材のオファーをさせていただいたところ、なんとご快諾。このインタビューが実現した。

西陽一郎氏へのインタビューは、まさに驚きの連続だった。

西陽一郎氏をはじめ、醸造所のご案内をしていただけた取締役 兼 工場長の有馬健晃氏、その他取材中にすれ違う西酒造の皆さん全員から「最高の焼酎を造る!」という強い信念と、どこの誰かもわからない我々に対して、おもてなしの思いが感じられたこと。また、「最高の焼酎造り」を支える製造工程と製造環境への完璧な配慮。何より一番驚かされたのは、西酒造のオープンマインドだ。老舗企業や伝統銘柄は、製法や製造環境について「門外不出」という、筆者の勝手なイメージは根底から覆され、どの質問に対しても、細部に至るまで大変丁寧なご説明をいただけた。そしてなんと、「他社にも真似をして欲しい」と言うのだ。
それは、「他社には真似が出来ない」という自信からではなく、西陽一郎氏自身が自らに課した、焼酎文化を普及させるという“使命感”から来る言葉だった。老舗企業を急成長へと導いた経営者であり、そして日本の焼酎文化を支える本格焼酎造りの“匠”。その両方の姿勢で、未来に向けた展望を示していただけた西陽一郎氏へのインタビュー。ぜひご一読いただきたい。

西 陽一郎氏インタビュー


Q:西酒造の焼酎造りのこだわりについて教えてください。

西氏:フランスワインの醸造家が持っている「ワイン畑」っていうと何を想像する?
筆者:ぶどう畑を想像しますね。

西氏:そうだよね。それじゃあ「焼酎畑」って言われて、田んぼや芋畑を想像できる?
筆者:・・・そう言われてみると、ワイン畑に比べて少しイメージが遠い気がします。

西氏:そこ!
杜氏が醸造を完璧にやるのは当たり前だけど、僕らは芋焼酎造りに必要な米や芋など素材作りのところから、焼酎造りと認識して、ぜんぶ自社でやることにこだわっている。焼酎造りに対して、米や芋を作るという概念はまだまだ認識されていないし、やっている蔵元も少ないのが現状。
「焼酎ブーム」が起きた時には、色んな銘柄が出てきたけど、なかなかその深いところまでは踏み込まずに、ブームは去ってしまった印象だ。僕らは本来、そこまでシンクロしてこだわるべきと認識しているので、業界に先立って20年前からやっているんだ。焼酎造りといえば、誰の頭にも芋の葉が拡がる広大な畑が想像できるように、自社でとことんこだわり抜く。また、一般的に「薩摩焼酎」と言われている概念・定義の中には「米」が入っていない。本来の「薩摩焼酎」と言えば、お米も芋も水も、ぜんぶ薩摩の原料を使ってやるべきで、そこまでやって初めて「薩摩焼酎」と言える、と考えているんだ。