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Meister Interview 西 陽一郎(Yoichiro Nishi)

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西酒造株式会社 八代目代表取締役/西陽一郎

西酒造株式会社 八代目代表取締役
西 陽一郎

  • 西 陽一郎プロフィール
  • ダイジェスト版(読了時間5分)
  • 記事全文(読了時間15分)

まえがき


今回取材をさせていただいた西陽一郎氏は、焼酎の本場、鹿児島県で約170年の歴史を持つ老舗企業:西酒造株式会社の八代目。本格焼酎ファンから絶大な人気を誇る「富乃宝山」「吉兆宝山」など宝山シリーズの生みの親だ。焼酎ファンであれば知っている方も多いことだろう。焼酎好きで宝山シリーズのファンでもある筆者が、幸運にも仕事で鹿児島にご縁ができ、そのチャンスに賭けて取材のオファーをさせていただいたところ、なんとご快諾。このインタビューが実現した。老舗企業を急成長へと導いた経営者であり、そして日本の焼酎文化を支える本格焼酎造りの“匠”。その両方の姿勢で、未来に向けた展望を示していただけた西陽一郎氏へのインタビュー。ぜひご一読いただきたい。

西酒造八代目代表 西陽一郎氏へのインタビュー


Q:西酒造の焼酎造りのこだわりについて教えてください。

西氏:フランスワインの醸造家が持っている「ワイン畑」っていうと何を想像する?
筆者:ぶどう畑を想像しますね。
西氏:そうだよね。それじゃあ「焼酎畑」って言われて、田んぼや芋畑を想像できる?
筆者:・・・そう言われてみると、ワイン畑に比べて少しイメージが遠い気がします。
西氏:そこ!

杜氏が醸造を完璧にやるのは当たり前だけど、僕らは芋焼酎造りに必要な米や芋など素材作りのところから、焼酎造りと認識して、ぜんぶ自社でやることにこだわっている。焼酎造りに対して、米や芋を作るという概念はまだまだ認識されていないし、やっている蔵元も少ないのが現状。
「焼酎ブーム」が起きた時には、色んな銘柄が出てきたけど、なかなかその深いところまでは踏み込まずに、ブームは去ってしまった印象だ。僕らは本来、そこまでシンクロしてこだわるべきと認識しているので、業界に先立って20年前からやっているんだ。焼酎造りといえば、誰の頭にも芋の葉が拡がる広大な畑が想像できるように、自社でとことんこだわり抜く。また、一般的に「薩摩焼酎」と言われている概念・定義の中には「米」が入っていない。本来の「薩摩焼酎」と言えば、お米も芋も水も、ぜんぶ薩摩の原料を使ってやるべきで、そこまでやって初めて「薩摩焼酎」と言える、と考えているんだ。

ここから醸造所に場所を移し、ご案内いただきながらのインタビュー


Q:西酒造の焼酎造りのサイクルについて教えてください

焼酎の醸造が始まるのは素材が収穫された後の8月~12月まで。1月~7月は農業としての焼酎造りや研究をしている。いまこの醸造所内に人がいないのは、杜氏全員で畑に出て、焼酎の素材になる米や芋の「仕込み」をしているからなんだ。4月に米の田植えが終わって、今(5月末)は芋の苗植えの時期。普通の蔵元だと8月からが酒造りだけど、僕らはみっちり1年間かけて「焼酎造り」をしているというわけだ。

焼酎の醸造過程を簡単に説明すると、まず米の洗米・浸漬をしてから米を蒸す。そして種麹(たねこうじ)を合わせて、温度管理された麹室で約2日間寝かせて「米麹」を造る(※一度の仕込みで使う米は約300キロ)。出来た米麹を今度は仕込み水に入れ、自社培養した酵母を加える。米がもつデンプンで麹が糖化され、それを酵母が食べて、約5日間かけてアルコール分を出しながら繁殖(発酵)していく。これが一次仕込み(もろみ)。そこに今度はきれいに選別された芋(一度の仕込みで使う芋は約1500キロ)を蒸かし、細かく粉砕して一次モロミと合わせる。これが二次仕込み(もろみ)だ。二次仕込みは5つの甕に分けて行い、通常9日~10日間ほどの時間をかけて発酵させる。アルコール分を求めすぎると酢酸などが増え、焼酎の香りに悪影響を与えてしまうため、熟成歩合85%程度で蒸留し、原酒にする。原酒のアルコール度数はおよそ35度程度、これをろ過して約100日以上貯蔵・熟成させると焼酎が完成する。

Q:一人前の杜氏になるのには、どれくらいの年数がかかりますか?

単純な作業として、機械の使い方や工程などを覚えるのは、2年間みっちりやれば覚えられる。他にも帳面から酒税から、色んな知識も学ばなければならないし、何より重要なのはすべて工程の「意味」を把握して、失敗や成功の理由を理解しながら仕事を覚えて行くこと。そのためには最低でも4~5年は掛かる。そこからさらに経験を積んで、色んな勘が働くようになるし、新しいことへのチャレンジもできるようになっていく。1人前までと言われればやはり10年かな。ウチでキャリアが長い杜氏だと20年を超えている。ここにいる有馬(取締役 兼 工場長)も、優秀な杜氏だね。