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Meister Interview 西 陽一郎(Yoichiro Nishi)

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西酒造株式会社 八代目代表取締役/西陽一郎

西酒造株式会社 八代目代表取締役
西 陽一郎

  • 西 陽一郎プロフィール
  • ダイジェスト版(読了時間5分)
  • 記事全文(読了時間15分)

ここから醸造所に場所を移し、ご案内いただきながらのインタビュー


Q:西酒造の焼酎造りのサイクルについて教えてください

焼酎の醸造が始まるのは素材が収穫された後の8月~12月まで。1月~7月は農業としての焼酎造りや研究をしている。いまこの醸造所内に人がいないのは、杜氏全員で畑に出て、焼酎の素材になる米や芋の「仕込み」をしているからなんだ。4月に米の田植えが終わって、今(5月末)は芋の苗植えの時期。普通の蔵元だと8月からが酒造りだけど、僕らはみっちり1年間かけて「焼酎造り」をしているというわけだ。

焼酎の醸造過程を簡単に説明すると、まず米の洗米・浸漬をしてから米を蒸す。そして種麹(たねこうじ)を合わせて、温度管理された麹室で約2日間寝かせて「米麹」を造る(※一度の仕込みで使う米は約300キロ)。出来た米麹を今度は仕込み水に入れ、自社培養した酵母を加える。米がもつデンプンで麹が糖化され、それを酵母が食べて、約5日間かけてアルコール分を出しながら繁殖(発酵)していく。これが一次仕込み(もろみ)。そこに今度はきれいに選別された芋(一度の仕込みで使う芋は約1500キロ)を蒸かし、細かく粉砕して一次モロミと合わせる。これが二次仕込み(もろみ)だ。二次仕込みは5つの甕に分けて行い、通常9日~10日間ほどの時間をかけて発酵させる。アルコール分を求めすぎると酢酸などが増え、焼酎の香りに悪影響を与えてしまうため、熟成歩合85%程度で蒸留し、原酒にする。原酒のアルコール度数はおよそ35度程度、これをろ過して約100日以上貯蔵・熟成させると焼酎が完成する。

Q:今は醸造所が稼働していない時期ですが、どこを見てもピカピカですね。

良い焼酎は清潔な環境からしか生まれない。これは絶対にそう。
醸造作業そのものももちろん大切だけど、1にも掃除、2にも掃除。そこからどんな些細な仕事にも絶対に手を抜かない信念を持つことができると考えている。だから醸造をしない今の時期でも、掃除をやらない日は無い。

Q:それと、醸造所のどこに行ってもBGMが流れています。

あーこれね。よく「酒に音を聞かせる」とか言うじゃない? もちろんそれもあるけど、本当はさ。何も音がないシーンとした環境で仕事をすることが良くないって思っているからなんだ。本来焼酎の醸造はルーティンじゃないけど、ルーティンに近い仕事だってある。それをシーンとした環境でやり続けていると、人間って危なっかしいんだよ。笑。音楽が流れていることで心が落ち着いたり、気持ちをいい状態に保てることが出来るからずっとBGMを流しているんだ。実際、いまここにいて気持ちいいだろ?

Q:確かに気持ちいいですね。音楽はだいたいクラシックですか?

そう。クラシックだね。それが好きなんだ。笑

Q:この醸造所が稼働する時は何人くらいの職人さんで対応されるんですか?

まあ18人くらいだね。

Q:こんなに広い醸造所を18人で動かす?

広さは関係ないよ。ぜんぜん関係ない。
今は18人で3万石製造しているけど、昔は二人で1万石製造していたからね。気合いだ!気合!

Q:皆さん、お休みはどれくらい取られているんですか?

土日祝日は休みだよ。みんな仕事が楽しいから、やりたい分だけやらせて欲しいっていう意見もあるけどね。 やっぱ労働基準法とか、最近はちゃんと配慮が必要だろ?笑。1~7月の素材の仕込みの時よりも、醸造の時の方が集中的にやらなきゃならないことが多いから、醸造の時期は休みが減ったりもするけど、原則週休2日にしているんだ。若かったメンバーにも子どもができているし、家族との時間もちゃんと大事にして欲しいからさ。

魚が泳ぐ池の上に伸びる石廊下を渡り、白い天井が高くぬけるチャペルの様な空間へ


Q:まるでチャペルのこの空間はなにをする場所でしょうか?

「静の空間」って言ってさ、この奥に長期熟成の焼酎樽を眠らせてあるんだよ(※誰もいないこの空間にも、クラシックが流れている)。全部で970樽ある。ここに最長7年3ヵ月間、寝かしているんだ。「天使の誘惑」っていう銘柄があるんだけど、それだけの長期間熟成させると、樽の中で少しづつ量が減っていく。それが天使への分け前、ってことでその名前を付けたんだ。ちなみに長期貯蔵酒ってよく聞くかも知れないけど、50%以上、古酒が入っていれば、そう謳っていいことになっている。でも、僕らが造っているのは100%ぜんぶ古酒で長期熟成だから、熟成樽がどんどん貯まって行くんだ。