松崎商店 代表取締役社長 
松崎 宗平(後編)/「想像通りの『おいしい』を作りたい」

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「想像通りの『おいしい』を作りたい」
定番の瓦煎餅と10年ぶりの新商品“チョコレート・カカオニブ煎餅”

江戸時代から変わらないおいしさと美しい絵柄の瓦煎餅「三味胴」(しゃみどう)で人々を魅了する「銀座 松崎煎餅」の八代目、松崎宗平さんはITベンチャーを経て松崎煎餅に入社すると様々な変化を老舗煎餅屋にもたらしてきた。今後も、約10年ぶりの新商品としてチョコレート・カカオニブを使った煎餅を発売するほか、時代の変化に合わせて全商品のパッケージもリニューアルする。「食文化を作らないといけない」と語る松崎さんは、おいしい煎餅を届けるためのアイデアを次々と実現している。

Q:長い歴史のなか何度も店が燃えたそうですが、乗り越えてきたパワーの源は?

松崎煎餅は1804年から65年までの61年間は東京・芝の魚籃坂にあったのですが、銀座に移った後に明治の銀座大火、関東大震災、続いて戦災という順序で3回燃えてるんです。どうやって復活できたかは想像でしかわかりませんが、煎餅に対する愛情や、煎餅しかないという気持ちが強かったのかな。祖母からよく「どこまでいってもあなたは煎餅屋なんだから」と言われていたのですが、商売が好きな家系なんだと思います。作り手としてではなく、コミュニケーションとか小売りに対してプライドがあるのか、祖父の代から、松崎家は焼き場には入っていません。祖母も「焼き場に入れ」とは一言も言ったことなくて、でも「店に立て」はすごく言われました。僕も店に立つのは好きなんですよ。

銀座という町の復興に関して言うと、銀座大火があった後に、国が指定して全部煉瓦造りに変わったけど、ものすごい居心地の悪い空間だったらしくて。だから国から言われたことは守りつつ、町のみんなの考えでブラッシュアップさせていいものにしていったそうです。それが震災でまた燃えてしまって、みんなで銀座を離れようという話もあったけど、やっぱり町が好きだからやり直そうということで、9月に震災があって11月には復活祭が開催されました。すごい速さなんです。

いまでも町の人たちは会社の規模感関係なしに、みんなの意見をまとめて進んでいきます。何度も何度も議論を重ねて次のステップに進んでいくのは、ウィークポイントでもあるかもしれませんが、強みなのは間違いありません。だからこそ銀座に対する愛着があって、みなさん商売が続くのかなって気がします。

Q:店舗について、百貨店と路面店はどのような違いがありますか?

百貨店と路面店を合わせて9店舗あります。百貨店はギフトを買うのがメインの場所で、路面店となるコンセプトストアを出した理由は、百貨店では押さえられない層を押さえる必要があるからです。百貨店はブランディングのためにも必要ですけど、文化づくりにならないというか、文化づくりのゴールだと思うんですよ。服がイメージしやすいと思うんですけど、小中学生の頃から好きだったスーパーの服からだんだん好みが変わっていって、マルイとかルミネが好きになって、デパートにも行くようになる、みたいな。食品でもその流れを作ることが大切なはずなんですよ。

いまはネット通販があるので、小売りの仕事はモノを売ることじゃなくて経験を提供することだと思っています。やっぱり店ではモノ消費は難しくて、コト消費に振っていくうえで路面店は勝負する甲斐がある。ただ百貨店は最高のホスピタリティというのが一番の武器だと思うので、「素敵な買い物をしている」と思ってもらえるサービスを強化したいですね。

Q:コンセプトストアと百貨店で好まれる煎餅は違いますか?

三味胴って面白くて、僕が小学校の時にもっていたイメージはおじいちゃんおばあちゃんが食べるものだったんですよ。でも今は変わっていて、若い人は「かわいい」って三味堂を買って行ってくれるし、百貨店で買っていく方も「やっぱり三味胴よね」と言ってくれます。結局どちらも三味胴が好まれますね。(笑)

Q:今後、煎餅文化を広めていくような商品の構想は?

年明け2月頃を目標にパッケージが全部変わります。目的が2つあって、一つは2020年の4月に食品の表示のルールが変わるので、それに合わせて表示領域を増やすためです。その流れで、ただパッケージを変えるのは面白くないので「攻めよう」ということになりました。もう一つは、ギフト需要において、パッケージにかなりのお金がかかっている世の中で、食品会社としては各商品検査にも出さなきゃいけませんしいろいろな経費がかかります。そんななかでパッケージにコストがかかって味が落ちた、枚数が減ったというのは、本当に消費者が求めることなのかなというのが疑問でした。

それを伝えるために「包材は高いからコストを下げました。それでこんなデザインにしたけどどうですか?」というのをコンセプトにしたかった。缶は大部分を廃止したり、エコの面もあるのでプラスチックのトレイもできる限り紙に変えて、燃えるゴミで捨てられるようにしたり。コストを下げて美味しい商品をなるべくいっぱい食べてもらえるようにと考えました。包材のデザインも、名前の知れたデザイナーさんを入れたほうがおもしろいことができるかもしれないけど、包装設計ありきで考えられる人じゃないといけないので、今回は包装材屋さんのお抱えデザイナーさんでコンペしています。

あとはおもしろいものも出せればと思って、チョコレートとカカオニブを使った商品も出します。こちらは、蔵前にあるダンデライオン チョコレートさんのものを使用していて松崎煎餅として新商品は10年以上ぶりくらいなんです。今までもチョコレートに手を出したことはありましたが、あくまでメーカーさんにOEMでチョコレートの部分を頼んでいました。それを打破したくて、自社で全部作れるものにして。チョコレートを混ぜた生地にカカオニブとピーナッツを入れて瓦煎餅を作ったもので、すごく美味しいので期待していてください。

僕が他の和菓子屋さんのご主人とかとやっている「アンコマンないと」っていうイベントがあるんですけど、そこにも新商品を持っていったりしています。もともとアンコマンナイトは「和菓子って敷居が高いから、もっと気楽に楽しめるようなすごく楽なイベントをやろう」という話から始まりました。「こんな気楽に食べていいんだ」みたいな空間を作りたいなと思って。僕らは音楽も好きなので、ミュージックセレクターをやって、基本的には自分たちのお菓子を持ち寄るだけです。その規模が広がってきて、10月には「東京ハーヴェスト」というイベントで「フタバフルーツ」とコラボするイベントがあったので、フルーツとだったらチョコが合うだろうなということで新商品を披露しました。

Q:松崎煎餅で今後目指すことは?

僕は「おいしいは2種類ある」という話をよくしていて、一つは超絶的な、自分の想像を遥かに超えてくるもの。もう一つは、例えば「オムライスを食べたいな」と思ったときに、自分が想像したのと全く同じオムライスが出てきたら、それも「おいしい」ですよね。その、全く同じものを作りたいんです。煎餅の場合、前者のおいしいものは50年働いて1回作れるかどうかじゃないかと思っています。今回発売するチョコの煎餅は、見た目から「こういう味だろうな」って想像するのと同じ味がすると思います。逆に突飛なものは作れませんし、あくまでもウチの技術で作れる範囲で、安定供給できるほうが商売として正しいと思っています。三味胴はそのあたりがしっかりできている商品ですね。

ここ何年か仕事をしてきて辿り着いた、ゴールになるキーワードが「食文化」という言葉だと思っています。長く商売をやっていると「文化」という言葉はよく出てくるのですが、作らないといけないのは食文化なので、そこに基づいた仕事をすべきだと思っています。

"日本の匠に尊敬と感謝の思いを込めて" - Grateful JAPAN

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