今野製作所/CHERUBIM代表 
今野 真一(後編)/「憧れてもらえる最高のフレームを目指す」

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憧れてもらえる、最高のフレームを目指すのが面白い

ハンドメイドオーダーフレームを世に送り出す自転車ブランド「CHERUBIM」(ケルビム)。北米ハンドメイドバイクシクルショー「NAHBS」(ナーブス)で最高賞を獲得した「Humming Bird」(ハミングバード)など代表・今野真一さんが生み出す芸術的で革新的なデザインは世界中のファンを魅了してやまない。一方、職人としてはオーダーメイドというユーザー1人ひとりに合わせた製作方法や、スティールという素材にこだわる。「デザイナー」「職人」という両側面からお話を伺った。

今野真一さん インタビュー


Q:NAHBSに出展する自転車はどういう発想から生まれたのでしょうか?

アメリカへの出展は、海外のビルダーがどういう自転車を作っているのか技術的なことを知りたくて、行くことになったら今度は「行くなら出そう」という話になったのが始まりです。

海外のイベントに限らず、展示会に出す時は変わったものというか、ショーモデル的な自転車を出そうと考えていて、普段からやりたいなと思っていることを発散させている感じです。僕が子供の頃は、モーターショーに連れて行ってもらった時にスーパーカーを見て夢をもらったし「こういうモノを作りたい」とワクワクしました。だからスーパーカーのようなショーモデルを提案したいなというのがあって。NAHBSはお客様が商品を買いに来る場でもあるから販売だけでも問題ありませんが、せっかくなら変わった自転車を作って夢を抱いてもらえたらいいですよね。実際に、それを見てフレームビルダーになりたいと言って学校に教わりに来てくれた方が何人もいますし、できる限り続けていきたいと思っています。

自転車はもともと機能の塊なのですが、「Humming Bird」はちょっとした遊び心がデザインにつながったものです。プロに乗ってもらうとか、レースで使うための自転車かというとそれは違います。でもちゃんと走れますし、それほど数は多くはないですが、お客様に作ることもありますよ。

Q:デザインを作る時に参考にするものや考えていることは?

自転車に限らず、オートバイとか車も好きなので「どうやって作っているんだろう」という目で見ていますね。実際に作る時は手書きの絵から始まって、大枠を決めて、図面を引いていきますが、こういう自転車の場合は現物合わせ的なところもあるので、作りながら考えていくこともあります。通常の業務もあるので、構想から作るまでの期間は1カ月か、たぶんもっと短いですね。

でも、ただデザインのことだけを考えて作るわけではありません。普段は機能と戦っているから、崩せないんですよね。自転車は完成されたスタイルだから。こうしたほうが軽いんじゃないか、強度は高いんじゃないかと考えながら作っていますから、自転車を知っている人間がデザインすると、割と無駄のない形になりやすいんだと思います。ただ格好だけでデザインしていくと、自転車として意味のないものになってしまいます。強度に関わるフレームは、家でいうと外装ではなく骨組みみたいなものです。骨組みには全て意味があるので、それをデザインするのがすごく難しくて面白い所だと思います。

Q:理想的な素材がスティールというのは、経験から導き出したもの?

色々な用途やシチュエーションに合わせた自転車があるのはいいことですし、それに合う素材はそれぞれ違うかもしれませんが、僕らが理想とするのはスティールの自転車です。いまレースで使える素材はカーボン、アルミ、スティール、チタンくらいです。

素材自体で乗り心地も変わりますが、僕らは同じくらいジオメトリー(サイズ)も大事だと考えています。細部まで調整してその人にサイズを合わせられるのはオーダーフレームしか有り得ませんし、オーダーフレームを作るにはスティールが一番だと考えています。

Q:ユーザーはオーダーメイドのどこに魅力を感じているのでしょうか?

ケルビムはフレーム1本25万円から高くて60万円くらい。それに高いパーツをつけるとすぐに100万円を超えてきます。ただ、大きな量産メーカーでも100万円くらいのカーボンロードバイクが出ていますがカーボンは寿命が短いですし、身体にも合わせていない新モデルを頻繁に買うというのは、モノとしては愛着が持てないのではないでしょうか。「自転車は自分の相棒だから、毎年新モデルに乗り換えていくものではない」と考える方々がケルビムに来てくれていると思っています。

スティールの自転車は一生乗れます。よほどサビたりしなければ修理もできますし、メンテナンスもパーツの付け替えることもしています。一台買っていただくと、オーダーから完成まで半年近くたくさんコミュニケーションをとっていくので、それからも付き合いが長くなっていきますね。

Q:2018年にレギュラーラインアップを拡大した理由は?

オーダー車は敷居が高くて怖いという人や、完成車がないとどういう自転車かわかりにくいという人もいると思うんです。そういった方に、どれだけわかりやすく提示して広めていくかがポイントだと思ったので3モデル(荒れた路面でも乗りこなせる「All Road‐disc」、小径車の「CR」、クラシカルな「Super Touring」)を作りました。オーダー車のショールームを設けてサンプルを置いたり、ショーに出したりしている所は少なくて、僕らだけかもしれません。それは、多くの人にオーダー車を知ってもらいたいという気持ちからやっていることです。

自転車のパーツにも進歩があって、いまだとディスクブレーキになったりシャフトが変わったりと進化しているので、対応するためにフレームもモデルチェンジをしています。だから今後もラインアップを増やしていく可能性はあります。僕らが作っているのはフレームであって、いい自転車を一から十まで作ることはできません。パーツがグレードアップして規格が変わってきたら、僕らはいいパーツをチョイスしながら、それに合うフレームを提案していくことが一つの使命だと思います。フレームが完成したから僕らは変える必要ないというものではなく、変わり続けていく必要がある。各社がお互いに協力しあっていい自転車を作っていくというイメージです。

Q:フレームビルダーという仕事のやりがいは?

やはりずっと乗り続けてもらえること、乗っている人が喜んでくれることです。作ってから5年とか10年経って、メールや手紙をいただいたり、どこかでお会いしたときに乗り続けてくれていることを教えていただけたりするとうれしいですね。誰かの“愛車”を作れるのはなかなかないことだと思っています。

ケルビムの展望としては、憧れてもらえるような、最高のフレームを提供できるブランドでいたいと思っています。僕らは人数も規模も限られているので、一番上のクオリティを目指して追求していきたい。そういう仕事が面白いし、好きなんです。スティールのオーダーメイドフレームで納期が6カ月というのは、もしかしたらバカげてるように見えるかもしれません。でも僕らはそれがいいと信じてやっています。

"日本の匠に尊敬と感謝の思いを込めて" - Grateful JAPAN

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