福山酢醸造株式会社 代表取締役 
重久政隆(後編)/「手間のかかる製法だからこそ価値がある」

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“昔ながら”へのこだわりが生み出す高品質の黒酢
「手間のかかる製法だからこそ価値がある」

創業200年を迎える「福山酢醸造」は、「かめ壺仕込み」という伝統の製法を重んじ、昔ながらの良質な黒酢作りを追求している。一方で食文化が変化し卓上からお酢が姿を消しつつあるなかおかずにうまみを加えるお酢や、健康志向の人々やお酢が苦手な人でも飲みやすい黒酢ドリンクなど、時代に合わせた商品も開発している。

インタビュー後編は、「作る手間もかかる効率が悪い製法だからこそ、続けていく価値がある」と語る六代目の重久政隆さんに、福山酢の黒酢の魅力や黒酢のさまざまな楽しみ方を聞いた。

重久政隆さん インタビュー


Q:時代の流れとともに、消費者がどのように変化していると感じていますか?

調味料として“純粋なお酢”というものが売れにくい時代だなという印象があります。昔の家庭には当たり前に置かれていたのに、今では調味料としてのお酢さえもないことがある。そのため「合わせ酢」のような、混ぜるだけで簡単に酢の物を作れるような商品を、変化に合わせて開発してきました。

やはり健康志向の高い方が購入されることも年々増えています。昔から健康食品として扱われていますが、「疲れたらお酢」という感覚をお持ちの方も多いでしょう。それから、黒酢を飲むお客さまの層としては女性が多い。そもそも男性よりも女性の方がすっぱいものが得意な傾向がありますよね。発酵食品に対しての意識の高まりもあって、発酵コーナーを作っているスーパーマーケットなどもありますし、健康を気遣うお客さまが増えることで市場規模は拡大していると思います。

お酢の中でも、黒酢と白い酢では原材料から違って、黒酢は玄米から、普通の酢はアルコールから作ります。黒酢は原材料が限られていて、添加物がありません。最近は原材料を気にされるお客さまも増えていて、そういう方にとっては玄米しか使っていない黒酢は、わかりやすくてシンプルな商品だと思います。

Q:色々な商品のアイデアはどうやって出していますか?

社内で話し合いながら決めていきますが、食の形態が変わってきたことで、商品開発のペースは最近になって増えてきました。うまみを効かせた味付け用の「おかずにかけま酢」は、お酢が食卓から消えつつあるなか、それに替わるものになればとご提案する標品です。そのように、今のお客さまのニーズに合ったものを提供していきたいと考えています。

Q:重久さんは、黒酢をどのように使って欲しいとお考えですか?

やはり私は、「黒酢は調味料」だと考えているので、料理に使うのが味をわかっていただく一番の方法かなと思います。どんな料理にも合いますし、料理を「おいしくしてくれる」存在がお酢なんです。

鹿児島では、刺身を食べる時に醤油にお酢を入れることもあります。私の家庭でも黒酢・醤油・ワサビを合わせていたのでそれが普通だと思っていました。特に刺身用のお酢を出しているわけではありませんが、お酢を好む方にはそういう食べ方が自然と定着しています。お味噌汁でもご飯でも、何にでもかけるのが習慣になっている方もいらっしゃいます。塩分を気にする方も多いと思いますが、塩分を減らした食事は味が薄くなりますから、そこに味を加えるためにお酢を使うのもオススメです。

鹿児島ですと、焼酎をお酢で割る方もいますよ。焼酎そのものがお好きな方は、焼酎の匂いが飛んでしまうので嫌かもしれませんけど。普通の黒酢ではなく、何らかの味のついた黒酢などを加えます。ウイスキーにザラメを入れたりするのに近いかもしれませんね。黒酢がお好きな方は、そうやってアクセントをつけるために使っていただけたらと思います。逆に黒酢に慣れていない方でしたら、甘さのついた商品をドリンクとして飲むことから楽しんでいただくのがいいのではないでしょうか。

Q:伝統の製法を貫く黒酢には、どんな特徴・魅力がありますか?

他社は少し削った玄米を使っていますが、殻を取っただけの丸玄米でやっているのが一番の特徴です。これは昔ながらの製法を守り、できるだけ変えずに作っている福山酢だけだと思います。

玄米は削ったほうが発酵しやすくリスクは少ないですが、アミノ酸の量が減るなどの影響があります。一方で丸玄米は発酵に不向きであるため効率という視点で考えると非効率な側面もありますが、削ったものより品質が良くなるんです。また、栄養価の高い黒酢を作れたのは、玄米のほうが白米より手に入りやすかった時代の副産物ともいえますね。

この製法でのお酢作りに「答え」はありません。壺の中に酢酸菌が多いのか、それとも雑菌が多いのかによって熟成のスピードが異なります。雑菌が多すぎれば腐ってしまうこともあるんです。かといって無菌室で仕込みをしては酢酸菌がないので、お酢は作れません。“いい菌”がいないといけないので、雑菌だけを除くということができない。だから難しく奥が深いのです。

大手メーカーの一般的な食酢は、無菌室のような管理された場所で、酢酸菌を投入してどんどん撹拌を早めて1日できあがります。それなら素早く作れますし効率がいいかもしれませんが、ゆっくり時間をかけてできあがったお酢とそれらのお酢では、味やアミノ酸の量など、品質が全く違います。

私たちの製法ですと、糀と天候がよかったとしても、100%うまく作れるわけではありません。並んだ壺を「壺畑」と呼ぶだけあって、農産物と同じように、出来も年によって異なります。ですので、毎年変わる出来栄えも楽しんでいただけたらと思っています。量が限られて、作る手間もかかる効率が悪い製法ですから、大手メーカーにはできません。それでも変わらずに良い品質の黒酢を作っているからこそ、私たちもやっていけるし、続けていく価値があると確信しています。

Q:200年続く老舗として、今後の100年を見据えた意気込みをお聞かせください。

大切なのは、守るべきものを守っていくことです。黒酢を作ること、壺で作ること、そういった伝統は守っていかなければいけません。ずっと同じことだけをするのではなく、お客さまのニーズに合ったものに対応していくことも必要だと思っています。生活様式やお客さまの食文化に合わせて、変えるところは変えていく。玄米と水、糀だけを使って壺で作る伝統の製法をベースとして残しながら、初代からこの土地で酢を作り始めて、先々代も先代も受け継いできたものを守っていきます。

"日本の匠に尊敬と感謝の思いを込めて" - Grateful JAPAN

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