株式会社船橋屋 八代目当主・代表取締役 
渡辺 雅司(後編)/発酵を世界に羽ばたかせる「くず餅乳酸菌」

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214年間変わらない“王道”のくず餅。
発酵を世界に羽ばたかせる「くず餅乳酸菌」

創業214年。発酵和菓子「くず餅」の名店として知られる「船橋屋」、八代目当主を務める渡辺雅司社長。インタビュー後編では、渡辺社長が推進する「being」経営の中身。また、450日かけて発酵させるくず餅づくりへのこだわりや、健康食品としても評価の高い“発酵和菓子”として、くず餅が広く注目されるきっかけとなった「くず餅乳酸菌」について語っていただいた。

渡辺 雅司さん インタビュー


Q:ありのままの自分で良い!渡辺社長が推進する「being」経営とは?

「being」経営とは、人のありのままを尊重して経営することです。「being」の考えを持てる人は、自分をひけらかす必要もなく、人を信頼できるようになります。本来経営者は「being」じゃなければならないと思います。「being」の対極は「doing」や「having」。この考えの人は、自分が考える“理想像”に対するこだわりが強いため、私はこんなことができる人間です!こんな人脈を持っています!など、知らず知らず、外に対して承認を求めてしまいます。「being」の基本は自然体であること。450日もかけて作ったくず餅の消費期限を、わずか2日間にしているのも、それが一番美味しく、自然と出てきた答えだからです。

組織も自然な状態がベストと考えるのは、自然には嘘がないからです。松下幸之助さんの言葉の一つに、「私は貧乏だから、身体が弱かったから、学歴がなかったから。だから成功した。」というものがあります。船橋屋に置き換えると、「くず餅は、手間が掛かるから、日持ちがしないから、下町にあるから、だから人々から愛された。」と、船橋屋の社員一人一人が、そう思えることが大切だと思います。

Q:「being」の考えを持つために必要なことは?

“自分の仕事の意義”を知ってもらうことだと思います。船橋屋の職人を例に挙げると、自分の作ったくず餅が、お客さまにとってどんな存在か?それが、見えていなかったんです。だから、職人達にも期間を決めて店頭に立ってもらいました。くず餅を買いに来てくれるお客さまの顔を見て、「美味しかった」とか、「お土産に持って行ったらとても喜ばれた」とか、「こういう場面で、いつも楽しみに食べている」とか。そういったお客さまの声を直接聞くと、職人もみな変わり始めます。「自分は意義のある仕事をしてる!」と、自分自身を承認できるようになり、だんだんと自然体でいられるようになっていくのです。

Q:船橋屋さんの評価制度について教えてください

船橋屋では、「行動」で給料を決めています。その人のグレードによって、評価するポイントが異なり、例えば一般職では、「この仕事ができると何点」といったように項目と点数を明確にしています。総合の点数に応じてグレードがあって、それぞれに給料が設定されています。リーダーとしてのポストであれば、自分だけがパフォーマンスを発揮しても、部下がパフォーマンスを発揮できていなかったら給料は上がりません。個人ごとに毎年目標を設定して、それに対する評価を行います。賞与に関しては、自分がコミットメントした数字に対しての達成度合いで決まるため、自分との闘いです。会社が与えた数字ではなく、自ら決めて、自ら実行する。ボーナスは、経常利益の3分の1を社員に還元しています。「インクルージョン組織」を創るためには、評価制度・給与体系をしっかりしておくことも重要です。

それともう一つ、年に2回「社内アンケート」を行っています。これは匿名で実施していますが、さまざまな項目について、5段階で社員が社員を評価します。こうした風通しの良さも必要で、船橋屋の役員人事は、社員たちの「総選挙」で決めています。その結果、30代の女性が執行役員に選出されたり、それまで上にいた部長たちのマネージメント力のなさが、アンケートで浮き彫りになることもあります。そういう状況になると、自分がリーダーとしての資質を持てるように変わるしかありません。

こういう場面で周囲に悪影響を与えてしまうのが、自分の承認欲求が満たされてない人です。経営者の方にも多いと感じますが、「私は尊敬されるべき」などと、自分中心の考え方で、変な理想にしがみついてる人です。「厳しくても、苦しくても、成功すれば幸せになれる!」と言ったような考えは古く、今は逆で「人は幸せを感じるから、成功する」です。アニメのヒーローでも、昔は1人で悪の組織に立ち向かう姿が美徳とされていましたが、今は「ワンピース」の様に、いろんな個性や特技を持ってる人を仲間にして、みんなで成功を分かち合う!こうした「インクルージョン経営」が今の時代には適しているのではないでしょうか。

Q:組織改革が進んでも変わらない、伝統の製法とは?

職人には、指先でくず餅の適正な弾力を測れる能力が必要です。この感覚がとても難しいのですが、2年で身に付けられる人もいれば、10年かかっても身に付かない人もいます。工場を設計する段階で、ある程度はオートメーション化しているため、人の手の入るところは少なくなっていても、この手の感覚はこれからもとても大切です。小麦粉の澱粉質と天然水、乳酸菌だけを使用して、450日間、乳酸発酵させ、絶妙なタイミングで蒸し上げる製法。また、やわらかく歯触りの良い食感を守るために、消費期限を2日間にしている点も、創業以来ずっと変えていない理由は、それが“最も美味しい”からです。

だから、くず餅の製法はこれからも変わることはありません。ただ、現在進めている工場の改良によって、現在の2日間という消費期限をあと1~2日間延ばすことは可能だと考えています。我々が考える、くず餅の最適な食感と弾力を損なうことなく、消費期限を延ばすには努力が必要ですが、それをお客さまが求めています。消費期限が1日延びるだけでも、贈り物や、遠方に持ち帰って召し上がるなど、お客さまの用途が大きく広がるからです。

原料については、その時その時で「最も品質の良い原料」を使うことにこだわっています。例えば「きな粉」の大豆は、国産のものを使う時もあれば、カナダ産、中国産のものを使う時もあります、黒糖はずっと沖縄の波照間産を使っていますが、常に“良いもの”を使うことを最優先していますので、決して固執しません。

Q:「発酵食品」としての、くず餅の展望を教えてください

お腹の調子が良くなる「くず餅乳酸菌」の健康価値と品質は、世界に通用すると考えています。医療の視点からも明確にして、「発酵」という言葉を世界に伝えたい。くず餅の従来のポジショニングは「亀戸天神の美味しいお土産」に過ぎませんでしたが、3年前に「くず餅乳酸菌」の商標を獲得しました。そこから徐々に、「身体の調子もよくなる機能性和菓子」へとお客さまの意識も変わってきています。それはくず餅が、無添加・グルテンフリーの発酵食品だからです。「くず餅乳酸菌」を広く世に知っていただくことを、船橋屋の使命と位置付けており、さまざまな国や機関と話を進めています。創業以来の「くず餅」の味と製法はこのまま大切に守りつつ、くず餅で培った「発酵」のノウハウを活かして、新たな社会貢献を創って行くことが、船橋屋八代目としての展望です。

ですが、劇的な成長や拡大は求めません。「ものづくりは、人づくり」という言葉にもある通り、船橋屋としての品質を確保できる「人」をしっかりと育てながら、これからも自然な形で成長して行きたいと思います。

"日本の匠に尊敬と感謝の思いを込めて" - Grateful JAPAN

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