株式会社まるや八丁味噌 
浅井 信太郎(後編)/「それでも八丁味噌という言葉を守っていく!」

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「それでも八丁味噌という言葉を守っていく!」
海外輸出を禁じられる老舗味噌蔵の覚悟

愛知県岡崎市の八帖町(旧・八丁村)は、江戸時代初期から続く伝統の製法・品質で造り出す「八丁味噌」発祥の地だ。この地で味噌蔵を営む「まるや八丁味噌」と「カクキュー八丁味噌(屋号:カクキュー)」は、「大豆」と「塩」と「水」だけを原料とし、6トンの木桶に仕込んだ原料の上に3トンもの川石を円錐状に積み上げ、二夏二冬以上という長い年月をかけて天然熟成させる製法で、独特の「硬さ」と「旨さ」を持つ八丁味噌を作り続けてきた。

ところが岡崎市の老舗2社は、今後国内外で事業の継続に大幅な制約を受けることになってしまい、その結果「八丁味噌」という名称で海外への輸出ができなくなってしまった。農林水産省(農水省)が制定した「地理的表示(GI)保護制度」で、岡崎2社よりも遅れて申請した組合の、岡崎2社とは全く異なる製法と品質の「豆みそ」が「八丁味噌」として登録されたからだ。本来なら伝統を保護するために存在するはずの制度によって、伝統とは程遠い「近代的な製法」が認証され、それが世界に広められようとしている。岡崎2社は排除されてしまった形になってしまった。
「まるや八丁味噌」浅井社長へのインタビュー後編は、日本の味噌文化を伝えるために注力してきた海外輸出を禁じられたなかで、老舗の未来を築いていくためのビジョン、そして「八丁味噌」という名を守ることへの強い覚悟を聞いた。

→浅井信太郎(前編)を見る

浅井 信太郎さん インタビュー


Q:海外輸出ができない状況についてどのような思いがありますか?

一体何が起こったのか? 私たちは長年、海外輸出に取り組んできました。それも、売上を増やすためだけの目的でスタートしたわけではありません。日本には旨味の豊富な「八丁味噌」という醸造文化があり、この独自の文化や哲学、歴史を伝える媒介が八丁味噌だったんです。

私たちは、世界に通用するためには「認証」の取得が必要と気付き、世界で認められる認証「Kosher(コーシャ)」や、「ECOCERT(エコサート)」、「O.C.I.A(有機食品認証)」などを得て、今日のEUでの市場作りの基礎を築き上げてきました。その結果、欧州でネイティブの方々から圧倒的な支持を得られるまでに成長し、「認証を取得した八丁味噌」として日本の醸造品に高い信頼が生まれてきたのです。味噌ならどこでどんな造り方をして構わない、というものではありません。

前編でお伝えしたように、どんなに不可解な進め方で決まったことであれ、今後岡崎2社は「八丁味噌」をEUで名乗ることが禁止されます。長い歳月を掛けてジックリ育て上げてきた、文化伝承の活動ができなくなることは大変な驚きです。何故なんだろうと素朴に思いますが、農水省には詳しい説明をしていただけず、困惑し続けています。法案を作成された農水省、了承された国会議員の先生方に思慮深い見直しを願っています。

Q:具体的に「困惑している」理由はなんでしょうか?

国内のGI制度は理想的な主旨が述べられており、主旨に沿った運用であれば欧州との良い経済関係ができることでしょう。しかし残念ながら、「八丁味噌」の登録に当たっては、主旨に沿わない出来事がいくつも重なっていたように思われます。とりわけ農水省から、「専門家委員がGI認定された八丁味噌も岡崎の八丁味噌も大差がないと判断したため、それに従った」という説明を受けたことが不可解です。下記の表を比較して、最終的に専門家委員を務める学者の先生方が、本当に「ほぼ同じ」と判断されたのだろうかという疑問が残ります。

今後も八丁味噌のGI認定について多くの方に見直しの署名をお願いしていくとともに、農水省の幹部の方には一般人の声を汲んでいただけるよう、公平な判断で正しく運用されるよう心から望みます。

Q:GI登録問題は社員の士気に影響していますか?

岡崎2社の八丁味噌が登録から外され、製法や品質が全く異なる「豆みそ」が八丁味噌として登録されたことに社員も驚きや危機感を感じています。岡崎2社は今後国内外で事業の継続が極めて不透明になってきました。その事態の重要性は社員と共有するよう心がけていますが、社員は平常と変わらず日々八丁味噌を醸造することに対する誇りをもってくれていることを肌で感じます。

また社内に限らず、今日では国内外問わず興味や関心をもって遠方から蔵の見学に来る方が増え、その方々からもGI登録についての疑問やご支援の言葉を頂戴しています。その信頼に応えようという社員たちの姿勢が伺えます。貴重なお客さまに選ばれる蔵元でありますよう、従業員と共に経営していく覚悟です。

今日まで長期間にわたり顧客として支えていただいた消費者の方々に、変わらぬ品質をお届けすることを社員一同とお約束し、正しい舵取りをして行こうと思っています。

Q:今後、経営方針を転換することはありますか?

江戸時代から引き継がれた「質素にして倹約を第一とする」という家訓に示している通り、継続して変わらない商いをし、八帖町の地で100年、200年と「八丁味噌造り」を続ける方針にいささかの変更もありません。商いを通じて社会貢献に励むことも大きな役割です。八丁味噌を通じてご支援いただいている顧客の方々、そして岡崎市民の八丁味噌を守りたいという強い期待に答えられるよう2社は製法と品質の維持を進めて参ります。

Q:伝統ある2社の「八丁味噌」という名前は守られるのでしょうか?

江戸時代初期から2軒の八丁味噌蔵が旧東海道を挟んで切磋琢磨して、最大のライバルでありながら今日まで製法と品質を堅持し、「八丁味噌」を名称として伝えています。各々の「蔵に棲む菌」を大切にし、その蔵に生息する菌が個性ある品質を産み出し、その味を「八丁味噌」として守り続けてきました。

今回のGI認定で除外されたのは誠に残念ですが、今後も機会あるごとに国内・国外に岡崎の八丁味噌の普及に努め、「八丁味噌文化」を広めて参りたいと決意を新たにしています。

<記者:平澤 尚威>

"日本の匠に尊敬と感謝の思いを込めて" - Grateful JAPAN

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