タビオ株式会社 代表取締役社長
越智 勝寛(前編)

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最高の品質を求め、“メイドインジャパン”を貫く!
履き心地の良さと、多彩なデザインが生む豊かな靴下文化

靴下の製法は、繊維製品のなかでも独特である。シャツなどが生地を切り抜いて継ぎ合せるのに対し、靴下は初めから筒状の生地を編み上げる。衣類のものづくりとして難易度が高く、日本では古くから職人たちの熟練の技術によって、世界トップレベルの高品質な靴下が作られている。

1968年創業の株式会社「Tabio」(タビオ)は、メイドインジャパンの靴下を世に送り出す代表的企業だ。ビジネス・カジュアル・スポーツ、さまざまな用途に対応する靴下を展開し、なかでもレディースソックスを中心に取り扱う「靴下屋」は、日本の繊細な技術で履き心地にこだわり抜き、多彩な機能とデザイン性で支持を集め、ショッピングモールや駅ビルなど、全国展開する“靴下専門店”として広く知られている。近年はオンラインショップにも注力しており、日本の靴下文化を先導する存在だ。

創業者である越智直正会長の後を継いだ、二代目:越智勝寛社長へのインタビュー。前編では、高品質ですべての人の足にぴったりと寄り添う靴下を届けたいという強い想いとこだわり、タビオが飛躍を遂げた歴史について語っていただいた。

越智 勝寛さん インタビュー


Q:タビオが貫く、品質へのこだわりとは?

タビオの靴下製造は、高い技術力を持つ国内の協力工場さんによって支えられています。また、“メイドインジャパン”をお客さまへの約束事として大切にすることで、世界最高水準の靴下をお届けしている!という自負や、社員のモチベーションにつながっています。靴下は、繊維製品の中でも最も難しいものの1つです。まず生地を筒状に編み上げていくのですが、その後にもさまざまな工程があり、履き心地の良い靴下を作るためには、それぞれに高い技術が必要です。生産量を上げるためだけに自動化を図るようなことはせず、創業以来、作り方を変えていません。各工程のチェックを行うのは何十年と働いている日本の職人さん達です。

靴下の構造上、最も負荷がかかる踵(かかと)の部分は、他の部分よりもしっかりと編む必要がありますが、生産効率を上げるために十分な手間をかけずに作ると、履いているうちにずれてしまいます。靴下を単に“消耗品”として考え、踵の作りが甘い製品が世に溢れているのが現状です。一方で、“こだわり”と“匠の仕事”も違います。素材にこだわって作ったという靴下でも、それが使いづらかったら匠の仕事とは言えません。“匠の仕事”と呼べる靴下を作るには、職人の経験から来る熟練の技術が必要なのです。タビオはつま先のかがりなどを、職人の手作業で作っています。

Q:創業者である越智直正会長は、職人として創業されたのでしょうか?

「靴下職人」というイメージが強い会長ですが、実は靴下を作る職人ではありません。例えるならコーヒーの“ブレンダー”です。あくまでも豆の味をチェックする職人であり、豆を摘んでるわけでも淹れるわけでもない。ただ、ブレンダーとしては超一流だと思います。会長は四国で育ち、お爺さんの遺言で大阪に丁稚にいくことになり、鶴橋の靴下問屋さんで下働きをしていました。基本的な仕事は、奈良などで作られた流行りの靴下を仕入れ、当時賑わっていた商店街の一角で売るという卸売です。

その後に独立し、最初は卸売で軌道に乗っていましたが、自社企画として、自分たちで決めた配色のボーダー靴下を作ったところ、大赤字になって倒産寸前まで追い込まれたそうです。その時に求められるもの=売れる靴下だけに集中し、品質を担保したうえでたくさん作れるような仕組みを考案しようと、現在の原型となる商売が始まりました。

Q:そこから業績を回復し、見事な飛躍を遂げました。

会長は「赤だって、黄色だって売れる!」と決めると、需要の多い黒と白と同じくらいの数をいきなり作ってしまうような人なんです。肝が座りすぎて、“男気のある” 作り方をしてしまう。逆説的に考えると、計算して作るような社長がいたとしたら、その面を強化しようと思わなかったでしょう。倒産しそうなぐらい靴下を作りすぎたことで、必要に迫られ、四苦八苦しながら売れる仕組みを作る方向に進んでいきました。

会長には、右腕として数字の面で支えてくれる有能な専務がいました。会長は、社長でありながら営業部長のような立場でしたので、商品を見分け、いい商品を売りたいという想いを結実することに専念できたのがよかった。卸売から変革する頃、商店街や地元に根差した小売店が姿を消していくにつれて、駅ビルや百貨店、郊外モールが全盛期を迎えました。そんな時代背景が、会長の積極的な気性とマッチして次々と出店していくことができたので、ある意味とても恵まれたと言えます。

Q:「売れる仕組み」の一つが、「お店の隣に工場がある」ようなシステムと言われています。

店舗で売れた商品情報を工場や物流センターなど全体で共有することで、全工程が独自に生産数を判断し、即座に補充するという体制です。「お店の隣に工場がある」ようなシステムと表現していて、このネットワークによって、定番商品については欠品の心配をすることはほとんどありません。また、この仕組みを使って、工場が勝負をかけることもあります。在庫状況を見て、「これは売れる」と思った商品を先んじて作ることもできるんです。

予想を上回るヒット商品に関しては売り切れることもありますし、1~2カ月ほど入荷できないことだってあります。ただ、その状況は「いい商品を作れた」ということですから、営業部や商品部にとっては、売り切れこそ誉れという面もあります。

Q:「この靴下は売れる」という手応えはどうやって感じ取るのか?

明らかにデータ上に現れるようになってきたら、その時点で対応が間に合わないというサインだと思っています。以前に比べて、近年は業界の流行予想が当たらなくなってきましたし、トレンドサイクルも早くなり、2カ月ほどでどんどん変わってしまいます。

2~3店舗で「この靴下が売れてきました」という噂が出てきたら、それが売れる兆しだと思っています。「この靴下いけると思います」とか、「あの子がかわいいって言ってました」とか、そのくらいの評判を聞きつけて打ち出してみたら、見事にヒットするというケースもあります。お客さまの動向を最前線で見ている店舗の販売員が、ちょっとした変化を見逃さないことが重要なのです。店舗ごとに独自の信条や概念がありますが、現場で起きた成功事例を、いかにより早く多くの店舗に伝達していくかが重要です。

Q:販売員さんの教育にも注力されている印象です。

教育というよりも、モチベーションの管理みたいなところですね。昔と違って、お客さまはインターネットで情報を仕入れられますし、店内でもスマホを見ながら、他社の靴下と比較することだってできます。そういう方に対しては、販売員が商品についてしっかり説明ができないと購入にはつながらない。全てのお客さまに通用するような決まり文句は作れませんし、ルーティン化できるものではありません。
自由にしすぎても、お客さんの意を汲まないような店ができてしまう場合がある。そのため、全部の商品を好きにならなくてもいいので、「この靴下のことだったら延々と喋れます」というような、気合を入れてご紹介できる商品を2~3点、販売員それぞれがもってもらえたらと思っています。

Q:「靴下屋」「Tabio」といった中心的なブランド以外の展開も多彩です。

「TABIO SPORTS」(タビオスポーツ)では、プロ選手も使用してくれる、高品質のスポーツソックスを発売しています。最初の製品は2004年頃に完成したのですが、スポーツソックスの一品だけをいきなり靴下屋に展開することはできず、お店には導入されませんでした。その後、私が本部長になった時に、大きなマラソン大会の現場に出向いて、直接販売することを提案し、2007年に第1弾の店頭販売を開始しました。そうした小さいことから始めて、現在では東京マラソンや大阪マラソンにもブースを出展していますし、Jリーガーにもソックスを履いてもらえるようになりました。

「Tabio ARTS」(タビオアーツ)は、もともと養護学校や老人ホームと活動するなかで生まれてきたブランドです。靴下を作る過程で「はぎれわっか」という円形の端切れができるのですが、それを日本中の施設に寄与して、座布団やカバーなどに再利用する活動をしてきました。そういった作業に関わる方のなかには、芸術的に素晴らしいセンスをもった方もたくさんいらっしゃいます。そこで、彼らのイラストを靴下にプリントしたらすごくいいものが出来上がったんです。それを見たアーティストや俳優さんが、自分にもやらせてほしいと言ってくれるようになり、さまざまなデザインが生まれました。プリントなので、デザインに制限がないのが特徴でありメリットです。

これらは時間をかけて進化し、お客さまに受け入れられてきたブランドですが、新ブランドにチャレンジして上手くいかないこともあります。製品そのものの品質よりも、ブランディングが先行するビジネスが流行っていますし、若い社員たちがそうしたチャレンジをするのは良いことです。ただ私自身は、靴下は靴下で面白いし奥が深いのですから、「最高の靴下を売っている!」と胸を張っています。一度履いてもらえれば、その品質に気付き、きっと気に入ってくださる!と自信を持てる商品を提供していますから。

<記者:平澤 尚威>

"日本の匠に尊敬と感謝の思いを込めて" - Grateful JAPAN

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