石原和幸デザイン研究所 代表取締役 
石原 和幸(前編)/エリザベス女王も認めた“緑の魔法使い”

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ガーデニングの本場イギリスで世界一の庭師に
エリザベス女王も認めた“緑の魔法使い”

「優れた庭師」をすぐに思い浮かべられる日本人はさほど多くないかもしれないが、庭造りが文化として定着しているガーデニングの本場イギリスで、多くの人々に知られ、リスペクトされる日本人庭師がいる。世界で最も権威のある大会「チェルシーフラワーショー」に毎年出展し、数々の栄冠を勝ち取ってきた、「株式会社石原和幸デザイン研究所」の石原和幸社長だ。

石原社長は生け花の道を志し、花屋として成功を収めたのち、ガーデニングで世界一を目指すことを決意。チェルシーフラワーショーに出展し続け、通算10度の金メダルを獲得、そのうちの5回は最高賞とのダブル受賞という偉業を成し遂げている。イギリス王室が公務で見学に訪れるほどの由緒ある大会であり、石原社長の作品を見たエリザベス女王から直接伝えられた「あなたは緑の魔法使いね」という言葉は、石原社長がいかに感動を与える庭を生み出しているかを象徴している。

石原社長への全2回のインタビュー前編は、世界最高峰の大会に挑み続ける意義、ハイクオリティの庭を生み出すための繊細かつ創造力溢れる仕事ぶりについて語っていただいた。

石原 和幸さん インタビュー


Q:石原社長のご経歴は生け花からスタートしていますが、幼少期から花や庭への興味があったのでしょうか?

私は長崎市三原町の生まれで、家の周りが段々畑になっていて、あちこちに川が流れている環境で育ちました。学校から帰ると山に秘密基地を作ったり、魚を獲りに行ったりしていて、山や川で遊ぶのが大好きでした。15歳から20歳までは、モトクロスというオートバイ競技の選手として本格的に活動していて、日本一、そして世界一を目指していました。しかし近眼になったためプロとしての活動を続けられなくなり、自分が人生を賭けるべき仕事は何なのだろうかと考え直すことになったんです。

そんななかで、両親がもともと牛を飼っていた土地に花を植えることになり、私もその手伝いをやってみようと思ったことをきっかけに生け花に入門しました。そして始めてみるとものすごくかっこよくて、自分のなかにスッと入ってきたんです。「これに人生を賭けよう」と思ったのが22歳のことでした。

地元で「池坊」という流派の教室を個人で開いている年配の女性に弟子入りし、そこで「花は足で生けなさい」という教えを受けました。季節を感じさせるものを、道や家の畑を歩くなかで探して、それを枝で表現しなさいという意味なんです。普通だったら、花屋で買ってきた花を使って生けようとするのでしょうが、その先生は本当に花が好きなんだなと感じ、そこに入門しました。たった3本の枝で風景を表現するんですが、それがかっこよくて!いかに少ない枝で表現するかを学んだことが、生け花から庭師になる原点にもなっています。

Q:そこから庭師を目指したきっかけや、チャレンジし続ける行動力の源は?

花屋を始めた頃に抱いていたのは、長崎で一番になりたいという想いでした。ところが追求していくと、日本一にならないと生き残れないと感じるようになり、さらに日本一を目指してみると、今度は世界一じゃないと通用しないんだと痛感しました。では世界一になるためにどうしたらいいのかと考えた時に芽生えたのが、「止まったら終わりだな」という気持ちです。

そこで「チェルシーフラワーショー」に参加することを決めました。成績を残し続ければ自分を試すことになるし、色々な方に出会って刺激を受けることもできるからです。日本で仕事をするにしても、世界でどの位置に立っているのかを知って、自分を磨き、挑戦を続けることで生き残っていけると感じています。

これまでに10個の金メダルを獲得し、最高賞とのW受賞を5回果たしていますが(※)、これからも出場し続けて、経験・実績を蓄積していくことが大事だと思っています。チェルシーフラワーショーの作品はサイズに規定があり、私が勝負しているのは8×6メートルのカテゴリーです。色々な大きさがありますが、私はこの8×6の職人として極めたい。そして、いままではその1カテゴリーだけでしたが、今後は色々なカテゴリーに社員をチャレンジさせようと思っています。

(※金メダルは基準となる点数を上回った作品全て、最高賞は最も評価の高い作品に与えられる)

Q:チェルシーフラワーショーにはどのようなスケジュールで臨むのですか?

大会が5月末に終わると、7月末には翌年の申し込み締め切りがあるので、デザインを考える期間は2カ月しかありません。そこでデザインを提出して、出場できるかどうかが9~10月頃に決まります。出場するとなったら、私たちは1チーム40人なので、その人数が渡航して現地で1カ月暮らさないといけません。日本からはものすごい費用がかかりますが、それでも出場する価値があります。

私は「出場すればいい」とは一切思っていません。金メダルを取るだけでもダメで、来てくれたお客さまを「どれだけしびれさせるか」が最も大事です。そして世界中のメディアに、「日本人の、石原の庭はすごい!」と伝えてもらうことも重要。日本人が世界で認められていくためにはそれが武器になります。私は、日本の文化は世界一だと思っていて、文化こそ日本が世界に打って出て人を感動させられる“技”なのだと信じています。そういった意味で、私はイギリスで、世界中の人を驚かせる庭を作り続けたいんです。

Q:競技としてのガーデニングの審査基準は?

まず植物のクオリティが素晴らしいか、つまり植物が元気かということです。それから全体の色のバランス、水を使っているならば、バクテリアが発生した際にどう対処するのか、建築基準法に合っているか、そういった項目で審査員が非常に細かく点数をつけていきます。施工期間中に危険な作業をしていたかどうかといった過程も採点の対象です。

当然チェルシーフラワーショーには自国のイギリス人の方が出場しやすく、審査員も全員イギリスの方です。そのシチュエーションで勝つためには、圧倒的に美しい庭を作らないといけません。1回勝ったくらいでは全然ダメで、本当の世界一を目指すには勝ち続けることが大事だと思っています。金メダルを取ることにプラスして、どこまで新しい「パッション(情熱)」を表現できるかが鍵です。

Q:新しいパッションを感じさせるのは、どのような庭なのでしょうか?

2019年の話をすると、私は「グリーンスイッチ」というテーマで挑みます。庭のなかにリビングがあって、そこで寝ることができて、シャワールームもある。真空管アンプの素晴らしい音響でビートルズの曲がかかって、イギリス人の好きなトライアンフのオートバイも置いてある。中庭に滝があって、全体が紅葉や苔で覆われている。そんな「庭に住む」ことができる幅8メートル、奥行き6メートルの空間が、都会のなかにあってもいいんじゃないかという問題提起をしようと考えています。

私がお客さまから言われて一番うれしいのは「これ欲しい!」という言葉です。「これいくら?」という質問が最高の褒め言葉。「きれい」では、ダメだったなと思ってしまいます。きれいであることは当然で、それくらいではお話にならない。見た人が欲しくなる、あるいは見ただけで泣き出すような庭を造れれば、それが最大の名誉です。

Q:石原社長の作品は、エリザベス女王からも称賛されたそうですね

「あなたは緑の魔法使いね」という言葉をいただきました。チェルシーフラワーショーには全体で大小500~600ほどの作品がありますが、公務で1時間ほどしかいられないなかで、王室の方々は毎回、私の庭にいらっしゃいます。これは最高にうれしいこと。しかも「この植物はどこで買ったの?」といった具体的なことまで聞かれるんですよ。ダイアナ妃の弟であるスペンサー伯爵が私のファンだと言ってくださっていて、お城に招待を受け、スペンサー家が作ったスイートピーの種と手紙をいただいたこともあります。

それから、ポール・スミス氏も毎回来てくれます。ポール・スミスの商品のデザインにはチェルシーフラワーショーをモチーフにしたものが多く、私の庭のデザインが入っている商品もいくつかあるんです。あの大会の影響力は、それほど絶大です。私が道を歩いていると声をかけられることもありますよ。いい作品を造り、さらにそれを継続することで多くの方々に認めてもらえているのだと実感できています。

<記者:平澤 尚威>

"日本の匠に尊敬と感謝の思いを込めて" - Grateful JAPAN

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