株式会社キングジム 代表取締役社長 
宮本 彰(後編)/社員を“ヒーロー”“ヒロイン”に!

0Like&Share

Facebook

LINEで送る

社員のやる気とアイデアを引き出す経営術
成功者を“ヒーロー”や“ヒロイン”に!

「キングファイル」やラベルライター「テプラ」で知られる株式会社キングジム(https://www.kingjim.co.jp/)は、ファイルを主力としてオフィス用品を展開してきたメーカーでありながら、「10個に1個がヒットすればいい」というユニークな社風で「世の中にない新しいもの」を作ろうと常にチャレンジし続けてきた企業だ。近年はペーパーレスの時代に対応するため、電子文具や女性向け文具の開発ほか、子会社ではキッチン家電や家具のネット通販を展開するなど、柔軟な姿勢でビジネスの幅を広げている。

宮本彰社長へのインタビュー後編は、次々と新商品が生まれる独自のプロセスや、社員のなかから“ヒーロー”や“ヒロイン”を作り出すという宮本社長のモットーに迫った。
→宮本 彰(前編)を見る

宮本 彰さん インタビュー


Q:「10個に1個が当たればいい」という社風のなか、近年生まれてきた商品は?

前編でもご紹介した切れてるマスキングテープ「KITTA(キッタ)」は、女性社員のアイデアから生まれた商品です。女子の間ではかわいいマスキングテープがすごく流行っているんですが、この手のものは私のような男性には発想がありません。男性向け、女性向けいろいろな商品がありますが、これは“ほぼ100%”女性向け。ここまではっきりしている商品はないですよね。それだけに女子にすごく好評で、多くの文具店に置いてもらえるヒットになりました。

他にも女子文具ですと、2018年に発売した「hacobuchi(ハコブチ)」というものがあって、これは箱型の額縁です。普通の額縁は飾るだけですが、分厚さを利用して、ちょっとした引き出しをつけて収納スペースを作りました。女子の“収集癖”として、美術館や博物館でポストカードを買ったり、お菓子の包装用紙がかわいいからという理由で集めたりするので、それを飾れて収納もできる商品になっています。

電子文具の「デジタル耳栓」という、人の声は聴こえるけれど騒音はカットするという耳栓も、画期的だと思います。電車や飛行機のなか、繁華街などうるさい場所でも、話し声やアナウンスはしっかり聞き取れる。この商品はヘッドホンやイヤホンに使われているノイズキャンセリングという技術によって、騒音の周波数を打ち消しています。その技術を搭載して、音楽を聞く機能を省くことで実現した耳栓です。これはもともと音響機器を扱うメーカーで働いていた社員のアイデアで、培った技術をこの商品に応用してくれました。

Q:こうした新商品が発売されるサイクル、プロセスは?

ほとんど毎月、新商品を出していますね。既存シリーズの色やサイズ違いもありますが、これまで世の中になかったものが常に2、3個ありますよ。10個に9個は売れないわけですから、みなさんご存じないかもしれませんが(笑)。

商品化を決めるために役員を揃えて行う最終的な開発会議に私も出ていますが、これは“承認会議”と言っていいものなんです。それまでに、ああでもないこうでもないといういくつかのハードルを越えてきたアイデアなので、よっぽどのことがない限りゴーを出します。我々の商品化の定義は、「売れるかもしれない」で十分なんです。「もしかしたら売れるぞ」と思えればワクワクしますし、絶対に売れると信じることを大切にしています。

ほとんど承認するだけの会議をなぜ開くかというと、「全員一致」でこの商品を作ろうと決めることが大事なんです。みんなで商品化を決めて、その承認者が社長であれば、失敗したとしてもその責任があるのは考案した人間ではありません。本当に売れないと思っていたなら、やめさせればいいわけですから。みんなの連帯責任なんだと考えるのが大事なことです。

なかにはアイデアがボツになることもありますが、それも10個に1個くらいです。例えば、他社で売れている商品の真似をした、特徴のない後追いの商品を作って楽しいでしょうか?多少は売れるかもしれないけれど、楽しみがないんです。ものまねはしないというのが一つのプライドなので、他社と同じものは出さない。「キングジムらしくない!」と思ったものは商品化していません。

Q:新しいアイデアを生み出せるように促す制度などはありますか?

年に1度の「社長賞」という、“人を褒める”ための賞があります。1年間で最も活躍した人を正月に表彰して、表彰状と金一封を贈る制度です。ヒット商品を開発した人が対象になることが多いですが、営業で大口の注文を取った人や、製造で大きくコストダウンを成し遂げた人など、どの部門で活躍したかは問いません。デジタルメモ「ポメラ」を考えた人には、最高額の100万円を支給しました。それくらいは開発者に還元していい商品になりましたから!

私は“ヒーロー”や“ヒロイン”を作ることがすごく大事だと思っています。商品開発で言うと、失敗はみんなの責任ですが、成功は個人のもの。最初にアイデアを出した人をヒーロー、ヒロインとして祭り上げるんです。ヒット商品に関する取材があったら、社長よりも担当者を出させます。今まで目立たなかった人が雑誌やテレビに出て一躍ヒーローになる姿を見て、自分もあんな風になれるかもしれない、次は自分がと燃え上がってもらいたい。実際に開発においては、同じ人ばかりがヒットを飛ばすのではなく次々と新しい人が出てきていますから、うまく回っていると思っています。

Q:商品開発に携わりたいと思う人は多いでしょうね。

社員に毎年自分のことを書いてもらう「自己申告制度」を設けていて、人事関係の項目の一つが「行きたい部署」です。みんなが行きたがる部署はやはり偏るので全員が希望通りとはいきませんが、可能な限り希望を通してあげたいと考えています。希望する部署に行きたいのであれば、そのためにいい仕事をしてくれると思っていますから。

そのせいか開発に文系出身者が多く、それに驚かれる方も多いですね。普通の会社ですと理系でものづくりを学んでいたり、デザインを専攻していた方が多いのですが、経歴を問わず開発にいけます。あくまでもアイデア勝負で、技術勝負じゃない。むしろ“枯れた技術”と言えるような既存の技術を、どうやって応用するかです。ノイズキャンセリングも確立されていた技術でしたが、デジタル耳栓の発案者が技術をもっていたことよりも、アイデアマンであったことが大事なんです。

Q:文具メーカーであり、発明会社でもあると理解できました。

そう言っていただけるのはうれしいです。10個に1個のヒットを作るという方針は変わらず、世の中にないものを生み出していきます。もしかしたら売れると思えば、「おもしろい、やってみよう!」となる。それだけでワクワクしますよ。売れると思った物が売れない、逆にこれは無理じゃないかと思ったものがすごく売れることもある。どうなるか全く分からないのでやってみるんです。「世界で初めて」と言われる商品を作れるのはうれしいものですよ。

<記者:平澤 尚威>

"日本の匠に尊敬と感謝の思いを込めて" - Grateful JAPAN

フォローしてSNSで最新情報をチェック >>

Facebook

LINEで送る