株式会社東京タワー・代表取締役
前田 伸(後編)/日本から世界のランドマークへ

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日本から世界のランドマークへ
「100年を超えていけるタワーを遺す」

東京のみならず日本の象徴ともいえる東京タワーは、昭和から変わらぬ美しさで日本人の心にしっかりと根付きながらも、新しい時代へ向けての変貌を遂げている。開業60周年を迎えた2018年には、250メートルの特別展望台を「トップデッキ」としてリニューアルし、体験型展望ツアー「トップデッキツアー」をスタートさせ、景色を見るための展望台から「東京の街を体験する」ことができる空間へと生まれ変わった。

「100年を超えていけるようなタワーを遺していくこと」が使命だと語る前田伸社長へのインタビュー後編は、7色の輝きを放つ照明「ダイヤモンドヴェール」が果たす役割や、“象徴的な存在”としての東京タワーの展望を伺いました。ぜひご一読ください。

→前田 伸(前編)を見る

前田 伸さん インタビュー


Q:東京スカイツリーという新しいタワーも誕生してきたなかで、東京タワーはどのような存在になっていると捉えていますか?

東京タワーはまだコンピューターや電卓すらなかった時代に、設計士のみなさんが計算尺というアナログな道具で設計をしました。1890年代のパリのエッフェル塔や、1950年代の東京タワーは、4つの足で支えるという設計思考、シンプルな技術しかありませんでした。東京タワーは地面を広く使い、展望台は狭いという構造物なのです。

70年代が分岐点になり、東京タワー以降にはカナダ・トロントのCNタワーなど非常に合理的な“1本足”のタワーが増えていきました。東京スカイツリーは東京タワーの建設から50年の時を経て、大きな技術革新を遂げた後の構造物ですから、土地の使い方や展望台の広さは最も合理的です。構造上の快適性や広さは、新しいタワーには敵いません。

それでも50年、60年と時代を超えてきた東京タワーは、訪れる方、見てくださる方の記憶や思い出に重なっています。目には見えないマインドが、みなさんの心に沁みついているのが東京タワーという存在なのだろうと思っています。

Q:東京タワーを未来につなげていくために大きな意味をもった事業は?

社長に就任して3年目の年に開業50周年を迎え、「ダイヤモンドヴェール」という新しい照明を導入しました。塔体にバスケットボールくらいの大きさの特殊な電球を276個取り付け、ホワイト、青、緑など7色に変化できる機能を持たせたのです。定番のオレンジ色のライトアップ(ランドマークライト)は間接照明によって鉄骨を内側から照らすものでしたが、外側へ輝きを放つ電球によって違う印象を演出できるようになりました。

この照明を初めて点灯した日、東京タワーがよく見えるビルの一室に、関係者が集まりました。スイッチを押して点灯した後、遅れてきた関係者が「街が大変なことになっていますよ」と部屋に飛び込んできたのです。東京タワーの周辺にいた方々がみんな足を止め、携帯のカメラを向け、その後も次々と人が集まってきました。そんな事態になると思っていなかったので、これほどまでに注目を集める存在になっていたのかと実感させられました。

私は“ちょうど50年”という年月が、構造物にも物事にも歴史としての価値が出てくる一つの節目になると考えています。造り出した人々の世代が終わって、世代を超え、記憶に刷り込まれてきたなかで、また新しいチャレンジができるようになっていく。ダイヤモンドヴェールは非常にいいタイミングで挑戦できた事業だと思っています。

Q:東京の象徴として、役割が広がったという印象を受けました。

ダイヤモンドヴェールは照明デザイナー石井幹子先生のデザインにより、7色それぞれにメッセージが込められています。メッセージを発信するという機能は、SNSなどで一人一人が発信できるようになった世相にも重なってきました。東京タワーは高度成長前に完成した構造物でありながら、時代・世代を通じてそれぞれの時代にメッセージや輝きを放っている存在なのだと思います。

その時代に応じて、必要とされるメッセージをお伝えしていくことも大事な役割です。東日本大震災が起きた後には、電力不足で東京タワーの光を落とし、その1カ月後に、太陽光発電で蓄電したバッテリーを使い、「がんばろう」「KIZUNA」といったメッセージをメインデッキに掲示しました。「世界自閉症啓発デー」や女性に対するDVを社会からなくすための運動など、厚生労働省や内閣府とも定期的に連携しておりますし、環境省の呼びかけに応じて、ライトアップを消灯することもあります。タワーの明かりを落とすこと自体が、メッセージになるのです。こうした要請があれば今後も可能な限り協力したいと考えていますし、その時々の社会情勢に応じて、ライトアップによるメッセージをお伝えしていきたいと思っています。

導入から10年が経ち、現在ダイヤモンドヴェールは長期メンテナンス中で、ランドマークライトしか点灯できない状況ですが、今年の後半には、メンテナンスも終了する予定です。来年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されますし、今後も様々なシーンでライトアップを点灯できると良いですね。

Q:東京タワーを後世に繋いでいくために何をしていくべきだと考えていますか?

我々の時代のミッションは、100年を超えていけるようなタワーを残していくことです。「鉄は腐らない」とは言いますが、老朽化していく部分を常に更新しながら、まずは構造体としてのメンテナンスを怠らず、耐震もより万全に行っていきます。

パリのエッフェル塔は2019年で完成から130年を迎えました。100年を超えるタワーは国の象徴というより、もはや世界の象徴になっていると言えます。東京タワーも50年を超える頃から、東京や日本のランドマーク的な存在として、少しずつ認識されるようになってきたと思います。今後は100年を超えることを目標とし、世界の大きなランドマークになるべく、ハードとソフトの両面をしっかりと充実させながら、今の時代を生きていきます。これまで以上に、東京タワーを訪れていただいた方、見ていただいた方みなさんに、大切に想っていただける存在にしていきたいと思っています。

<記者:平澤 尚威>

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