ユーコーコミュニティー株式会社・代表取締役社長
阿部 真紀(前編)/女性や美大卒、塗装業界に呼び込んだ新たな人材

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女性、美大卒、塗装業界に呼び込んだ新たな人材
「色を塗る」仕事に見出した“働きがい”

職人の半数以上が女性という、非常に珍しい外壁塗装の会社が神奈川県厚木市の「ユーコーコミュニティー株式会社」だ。一般的には“男性の現場仕事”というイメージが強い職業だが、「色を塗る仕事」にフォーカスしてアピールすることで美大生や女性の心を掴み、これまで業界にいなかった人材を塗装の道へと導くことに成功している。

社長の阿部真紀さんもまた、塗装とは無縁のキャリアを過ごしてきたが、「もっと女性が活躍できる業界にしたい」という現会長の想いに共感し、ともに会社を創設した。女性にとって“働きがい”のある会社づくりを目指すという取り組みは着実な成果を見せ、塗装の世界に新しい風を吹き込んでいる。

全2回のインタビュー前編は、「もっとオシャレで魅力的な業界になり得る」と語る阿部社長に、仕事としての特性に改めて向き合うことで再認識した塗装の魅力や、女性の職人を急増させた秘訣を伺いました。

阿部 真紀さん インタビュー


Q:まず塗装業界に身を置くことになったきっかけを教えてください。

私はもともと塗装や建築を志望していたわけではなく、全くの未知なる業界でした。大学時代は国際文化学部で学び、時代の最先端の仕事がしたいなと考えIT関連の企業に入社しました。大手企業をお客さまとするシステム開発の会社で、最初はテレアポを担当したり、営業活動をしたり、新しい事業のプロジェクトに参加するなど色々な業務に携わっていました。

その後、広告代理店で働いていた際のクライアントとして現在会長を務めている伊藤豊と出会いました。伊藤は塗装の業界歴が長く、「もっと女性が活躍できる業界になるべきだ」という想いを抱いていて、それを一緒に実現しようと誘いを受けたことが、私が塗装業界に進んだきっかけです。業界を変えていこうというビジョンに共感しましたし、会社を0から1に、そして1からさらに大きく成長・発展させていくことにものすごく魅力を感じました。女性の少ない業界でしたが、私は塗装に対しての偏見を全く抱いていなかったので躊躇なく、むしろ知らない世界だからこそ面白そうだという気持ちで挑めたんだと思います。

Q:もともと経営者になりたいという想いはありましたか?

「一生懸命やりたい」「仕事を通して成長したい」という想いで仕事をしていましたが、経営者になろうと考えたことは一度もありませんでした。立ち上げた当初は小さい会社なので、事務をはじめ塗料の在庫管理、業者さんとの交渉、求人を出すなど仕事という仕事は全般的にやっていました。役割が決まっているようで決まってない日々でしたが、一つの決められた仕事だけではなく、あれもこれもやらなくてはいけない所に身を置いたほうが面白い人生になるだろうし、逆にそれがないと成長できない部分もあるのでいい環境で仕事ができたと思っています。

Q:それらのご経歴のなかで身に付けてきた、業務におけるポリシーは?

新卒で入社した頃はうまく仕事ができず、取り立てて素晴らしい能力があるわけでもなかったと思います。ですが、テレアポを愚直にやるとか、膨大なデータのなかから抽出して資料を作っていった経験をしてみて重要だと感じたのは、そういった泥臭くて誰でもできるような仕事を、誰もできないくらい毎日しっかりやり続けるということです。これは常に仕事をするうえで意識していて、私は「毎日戦略」と呼んでいます。若い社員がいきなりすごい能力を身につけようとする必要はないと思っていますし、小さいことでもいいので、自分のできることを毎日続けようと社員には伝えています。

Q:女性社員が増えてきた要因は?

ユーコーコミュニティーを創設したのは2009年で、当時の社員は10人ほどでした。私の他に女性が入ってもすぐ辞めてしまうような状況でしたが、失敗や試行錯誤を繰り返すなか、ここ数年で女性社員が急激に増えてきました。女性社員が少し増えてくると、それを見て応募者がまた増えていきます。重い石を転がすのは最初が大変ですが、動かしてしまえば勢いがついてくるような感覚に似ていますね!

女性を増やす方法を考えていくなかで、私たちのなかに固定概念があったんじゃないかという気付きがありました。「そもそも女性は職人に向いていないのだろうか」「ベテランほど良いとされているけれど未経験ではダメなのか」と改めて考えてみると、決してそうではなかったんです。塗装は色を使うので、実はカラフルで華やかな側面があります。それならば、実はもっとオシャレな業界になり得るという面を訴求していくことで、女性にも魅力を感じてもらえる仕事になるのではないかと思いました。実際に、女性の方がきめ細やかに対応できることがありますし、お客さまから女性に来てもらうと安心だというご意見をいただくこともあります。

今年の新卒は14人が入社して、半数以上の9人が女性で、そのうち8人が美大卒です。グループ全体で現在の社員数は120人ほどで、職人の6割が女性。日本でこの比率の会社はおそらく他にないと思います。昔は女性を盛り上げようと女子会を開いていましたけど、今では男子会をやろうかと話しているくらいです(笑)。

Q:女性社員を増やすにあたって、どんなことを学生たちに伝えましたか?

もともと塗装業界に美大卒の人材は少なかったと思います。やはり建築を志す人が多く、私たちも最初はそちらへアプローチをしていましたが、建築学科の人たちが必ずしも塗装に関心があるわけではありませんでした。また、まだ会社が小さい頃、ただ女性に入ってもらいたいがために“働きやすさ”を売りにしようとしたのは失敗でした。その頃は本当に働きやすい環境ではなかったので、実態とのギャップが生まれてしまったんです。

そこで塗装という仕事の特徴について「色を扱う」「塗る」といった具合に分解して考えました。その現場に魅力を感じるのはどういう人だろうと考えた時に、美術系の学校に通っている学生なら共感してくれるのではないかと、塗装について知ってもらえる機会を設けていきました。それに加えて、女性であれば塗装の職人になるうえでデメリットになるポイントも事前に知ってもらうようにしました。朝は早くて、高い所に登りますし、夏は暑いので日焼けをするし、当然冬は寒い。「だけどこういう働きがいがあるんだよ」という話をしていきました。それが転機となり、共感してくれる美大生が、面白そうだと応募してくれるようになったんです。うれしいことに1人入社して、2人が入って、それから倍々で来てくれるようになりました。

Q:こうして新卒で入った社員は、どのような過程で職人としての仕事を覚えていくのでしょうか?

新卒の社員はまず2カ月間の研修を受けます。それは職人としての技術ではなく、お客さまとお会いする時に笑顔でハキハキお話しするなどの、社会人としての礼儀、コミュニケーション能力を養うことが目的です。その次の4カ月は営業活動でお客さまと接してもらうようにしています。その期間を経ておくことで、技術部に異動した時に現場でお客さまからいただけるのは、「ものすごく礼儀正しい」「職人さんのイメージが変わりました」といったご意見になるんです。ユーコーコミュニティーはそういった面でも、お客さまに満足していただいています。

技術面は研修で基礎を習得してから、現場に入り先輩社員から細かい部分を教わっていきます。先輩の男性社員たちは職人歴、業界歴が長く、技術面や経験面で優れているので若手にとっては教わることがたくさんあります。一方で、キャリアが長いからこそ固定概念に捕らわれがちな部分もあり、現場に女性が増えることによって、新しい発想が生まれたり刺激を受けたりすることがあるようです。あとは女性が1人、2人いるだけでチームの雰囲気が柔らかくなるという影響もありますね。

技術の継承を目的とした取り組みも行っています。若手職人たちの技術面をサポートできるよう、40年ほどの職人歴があるベテラン男性職人たちの経験や、彼らが感覚でやってきた知識や技術を全て動画などのデータにして、継承していこうという取り組みもしています。若手にとっては動画を撮って比較することで違いがわかるようになりますし、いままで何年もかかっていた修行を、1年や半年でマスターできるようにすることが目標です。ベテラン職人にも、若者に技術を伝えたいという想いがありますし、若い社員たちは彼らを師匠として見ているので、お互いのモチベーションにもなっています。

<記者:平澤 尚威>

"日本の匠に尊敬と感謝の思いを込めて" - Grateful JAPAN

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