日本の空手家(七段)/新極真会代表理事
緑 健児

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前に向かって進む限り、
可能性は広がり続ける

“武道”という言葉を辞書で引くと、「武士として身につけるべき技。武芸。武術。 武士として守るべき道。
武士道。」と出てくる。現在、武道とされている武術には「剣道、柔道、空手、弓道、馬術、忍術」があり、いずれも遠く武士が活躍していた時代から受け継がれてきた、日本独特の文化・武芸と解釈することができる。また“武士道”とは、武士達の中で発達した道徳であり、忠誠・勇敢・犠牲・信義・廉恥・礼節・名誉・質素・情愛などを尊重した思想とされている。
近年では、海外でも武士や侍を題材とした映画が作られ、日本の映画俳優やアスリート達が侍・武士と称されるなど耳にする機会も増えているが、実際に皆さんの周囲に、武の道に生きている人はどのくらいいるだろうか。
代表的な武道の一つである「空手道」。その中でも、全世界空手道連盟新極真会は、世界82か国で競技され、実に8万人を超える門下生を持ち、リアルの場面で自己研鑽をするために老若男女、学生、社会人を問わず、さまざまな人が集まり、その技を競っている。

現代社会において、武士道精神とはどのように受け継がれ、活かされるべきなのだろうか?
空手家として世界の頂点を極め、8万人の門下生を持つ組織のトップである緑健児氏の言葉には、その明確な回答があった。個人としてのゆるぎなき強さ、組織のトップとしての豊かさと深さを感じた今回のインタビュー。武の道にいる人でなくてもぜひ、ご一読いただきたい。

緑 健児氏インタビュ-


Q:極真空手とは?

空手には大きく分けて、直接的な打撃を行うフルコンタクト系空手と、直接的な打撃は行わず寸止めとする、ノンコンタクト系空手がある。
極真空手は故・大山倍達総裁が確立したフルコンタクト系空手で、素手・素足を使って相手と戦い、勝敗・決着をはっきりつける空手を指す。強さにあこがれる少年達・大人達の間で急激に普及した。さまざまな流派がある空手において、極真空手の一番の特徴は“強さ”であると認識している。

Q:空手を始めたきっかけは?

とにかく、喧嘩に強くなりたくて空手を始めた(笑)。その当時そういう若者が多かったと思うが、故・大山倍達総裁の「空手バカ一代」の影響が大きい。喧嘩に強くなりたくて、初めは通信教育で空手を始めたが、なかなか手ごたえを感じられなかったため、上京して本格的に空手を始めようと決意した。学生時代の卒業文集には空手で日本一になりたいと記してあるが、実際のところは喧嘩に強くなりたかった、というのが本音。笑

Q:極真空手で行う稽古とは?

大きく分けて2種類ある。空手の技や型を体得するための基本稽古と、それを試合に活用し相手に勝つための組手稽古。まず重要なのが基本稽古、空手家として基本的なスキルを身に付けるための稽古で、これができずに試合で勝てるということはまずありえないし、できなければ段位(帯の色)も上がらない。きつい姿勢でしっかりと静止した型を作れること、また力強さと柔軟性を持った動作ができること。これを何度も繰り返し行うことで、空手の型や技を体得すると共に、基礎体力がついてくる。
組手はそれを実戦で活かすための稽古。基本稽古がどんなにできても、実戦経験がなければ試合では勝てない。組手稽古を真剣に何度も繰り返し行うことで、相手の動きを読み、自分の間合いを掴み、相手に有効打を与えるタイミングと動きが見えてくる。

※談話:写真左/沖縄吉田道場責任者:吉田富和(三段)第26回全日本ウェイト制大会(中量級の部)優勝者

Q:精神面ではどんなことを教えている?
 

力や技を身に付けるだけでなく、優しさや思いやりを伴うことが、極真空手であり武道の本質であると教えている。道場の中では、経験・段位によって縦の関係をしっかりと維持しつつも、互いを尊敬しあう人間関係が築かれることが重要と考えている。後輩は先輩を師と思い尊敬し、先輩は後輩を友人・兄弟と思い尊敬する。道場に対して、体育会系で怖いイメージを持つ人がいるかも知れないが、決して理不尽な縦社会ではない。道場に入ることによって、日常接する機会がないような、年齢や立場を超えて、さまざまな人と接することができる。全員が一つの目標に向かって取り組むこと、その中でいろんな価値観に触れることで、人として豊かになっていく。
また、先輩は後輩が強くならなければ自分の稽古にならない。武道だけでなく、仕事でも同じだと思うが、下の者を強くすることに一生懸命にならないと、自分に返ってこないという関係があるため、先輩は皆、後輩を強くするために一生懸命に指導している。

Q:「黒帯を取る」ことは、空手家として一人前と言えるか?

誰でも頑張って稽古をすれば、必ず黒帯は取れる。黒帯を取ってから、さらに高みへたどり着くための修行は続いていく。空手を始める人には、緑帯や茶帯ではなく、黒帯を取ることを最初の目標とするように指導している。

Q:試合で勝つためにはどういう稽古が必要か?

選手として試合で勝つためにまず重要なのは、走り込みから腕立て・腹筋・背筋といった基礎体力をつけるための稽古。次に破壊力を増すための突きと蹴りの打ち込み。そして、ミット稽古。スタミナ稽古。その後の組手稽古など、一通りの稽古を集中してやることが重要。組手稽古は試合に出る人なら、1回の稽古で2分間×15ラウンド程度。突きだけの稽古から、突き・蹴りありの組手まで、それぞれの技を磨くために工夫して、バリエーションをつけて行う。

Q:怪我をしない体を作るためには?

脛(すね)で、思い切り相手の膝(ひざ)を蹴ってしまうこともあるし、拳と拳が思い切りぶつかることだってある。大きな大会ではそんな試合を1日で7~8試合もこなす時がある。どこを突いても、どこを蹴っても自分の体が傷つかないくらいに鍛えなければ、試合で勝つことなどできはしない。

怪我をしない体を作るためには、日ごろから堅い砂袋を突いたり、蹴ったりする稽古が必要。ビール瓶にテーピングを巻いて脛(すね)をたたく人もいれば、バットでたたいて鍛える人もいる。何度も血を流すほどの稽古をしなければ高いレベルには到達できない。そうやって、骨を鍛えるだけでなく、その上に筋肉の鎧(よろい)をつけることで、どこを突いても、蹴っても傷つかない体ができ、打たれ強さも備わってきて、大きな大会で勝ち上がれる。
重要なのは、普段の組手や稽古の中で、自分を追い込み習慣的にそういうことをやっていくこと。大会の前だけやっても大した成果は得られない。試合以外の期間もやり切ることではじめて、勝てる体になれる。

Q:全日本大会で優勝するためには、どの程度の稽古が必要か?

全日本に出場したいのであれば、1日5時間程度の稽古を週に3日以上が最低条件、それにプラスして自主トレを行う必要がある。優勝をしたいのであれば、1日7~8時間の稽古を週に6日やる必要がある。
稽古をする時に重要なことは、集中して質の濃い稽古をすること。ただ単に長時間の稽古をしてもあまり意味はない。質の濃い練習を長時間続けられるように日ごろから、自分を追い込み、一発一発に力を込めて、スピードを意識してやる。集中して稽古をする人と、流してやる人とでは、同じ時間稽古していても、3か月・半年・1年と経つうちに歴然とした差がつく。稽古中に力を抜いて流したり、できる技を出し惜しみするのでは意味がない。それともう一つ。チャンピオンになる人は指導者からの課題をこなす以外に、自分なりに工夫して自主トレを行っている。常に強くなるために受け身ではなく、自ら自分の技や戦い方を工夫・開発をしている人がトップになる。

Q:緑代表は世界大会で優勝しています。

世界大会は身長・体重差でクラス分けをしない無差別ルール。自分の身長は165cm、体重は70kg。他の選手に比べ体が小さい分、不安も大きかった。身長・体重で自分よりもはるかに大きい相手にどう立ち向かうのか?自らこれでもか?やれることはすべてやったか?と、自問自答しながら、自信がつくまで毎日10時間以上、何度でも限界まで稽古に打ち込んだ。

空手の稽古に打ち込めたのは、ひとえに両親の支えだった。空手の指導員と現役選手を掛け持ってやっていたが、その当時、指導員の給料だけでは家族を食べさせていくことが難しく、親からの仕送りが支えになっていた。現在84歳になる父親は実家の砕石工場で、今も現役でパワーシャベルを動かしている。両親がいなければ世界大会での優勝もなかっただろう。自分が世界大会で優勝したのは、29歳/キャリア13年目の時。その時が自らの体力の限界と判断し、指導者の道を決意した。

Q:指導者として、今後の展望について

空手道・武士道をさらに広めるために、よりたくさんの強い選手を育てることが重要と考えている。「強くなる」というのは、誰もが持つ明確な価値であり、本当の強さを身に付けている人を見て、人は心を動かされる。故・大山総裁の言葉にも、「華麗な組手をしなさい」「一撃で相手を倒しなさい」「技で人を感動させられる空手を目指しなさい」とある。2011年の世界大会優勝者である塚本徳臣(つかもとのりちか)のように、強く華麗な試合ができる選手を多く創出することが重要だ。組織の代表として、新極真会全体の展望を考えると共に、一指導者として、自分の道場(奄美大島道場、鹿児島道場)から世界チャンピオンを創出することを一つの目標としている。

Q:NPO法人全世界空手道連盟:新極真会の今後について。

新極真会は現在、全世界82か国で競技されていて8万人の門下生を持つ、フルコンタクト系空手で最も競技人口が多い流派。211名の支部長が、213の支部と、その何十倍もの道場をそれぞれ運営している。
国別の普及率をみると、2万人の門下生がいる日本を除き、ロシアやヨーロッパがとくに普及している。中でもリトアニアは国内のスポーツの中でも競技人口が五指に入るほど普及している。
今後、極真空手をさらに普及・発展させていくためには、現在の加盟国を含め、さまざまな国で空手道、武士道文化への理解を深めてもらうこと。そのためには4年に一度の世界大会や、ワールドカップなどの一大イベントの注目度を高めることが重要であると考えている。オリンピックと同様、選手の競技だけでなく、イベントそのものに感動してもらえるような形にすることで、加盟国・競技人口ともに増えていく。

Q:空手をオリンピックの公式競技に?

オリンピックの公式競技として認定を受けるためには、5大陸・5万人の競技規模が絶対条件で、それはすでにクリアーしているし、実のところ空手は柔道よりも競技人口は多い。もっとも大きなハードルは、大小さまざまに存在する流派を一つにまとめていくことだ。現在、複数の空手組織とルールが存在するが、大きく分けるとフルコンタクト空手とノンコンタクト空手。レスリングにもグレコローマンスタイルと、フリースタイルが存在するように、空手にもフルコンタクト空手、ノンコンタクト空手として連盟を作り、共通ルール化、またそれに賛同する組織を増やしていくことで道は開けると考えている。フルコンタクト、ノンコンタクト双方のルールが確立されれば、世界中の空手家達が夢を持てる。
その夢と全世界共通のルールに導かれて、空手家達が共通の目的を持つ。これが新極真会の究極の目標だ。

Q:実現の可能性は?

現在は「可能性がゼロではない」といった段階だが、このまま何も動かなければゼロで終わってしまう。 どんな高い目標も、前に向かって進む限り、可能性は広がり続ける。さまざまなハードルが山積みされているが、一つ一つクリアーしていくことでオリンピックの正式競技になる日が来ると信じている。

Q:空手人生を通して得たもの。

決してあきらめない心。
あきらめずに最後までやりきって、
成果を出すこと。

その信念が空手家としての選手生命を通して学んだ最高なこと。新極真会を運営していくうえでも、絶対的に重要であり、この組織を支えているゆるぎなき理念だと考えている。これまで逆境はいくらでもあったが、選手時代に経験した苦しい思い、辛い思いに勝るものは無い。それが今の自分と、組織を強くしている。
それと空手人生を通してできた仲間達。自分を支えてくれる2人の副代表(小林副代表、三好副代表)と7人の理事、そして世界82か国にいる211人の支部長達が仲間としている。極真空手を共に愛してくれている仲間が一番の財産だ。

Q:最後に、さまざまな業界で一流を目指す若者にメッセージ
武士道・極真空手の教えとしていつも言っているメッセージを4つ。

自分の夢を強く思い描き、すべてに全力を尽くすこと。

志を高く持ち、自らの考えや行動に限界を作らないこと。
あきらめずに努力すれば、必ず夢はかなう。

説得力を行動で示すこと。

口だけで行動が伴わない者には誰もついてはいかない。
行動で示せない者は、どんな業界でも一流になれない。

華麗さを持つこと。

人は華麗な姿に感動する。
ポジティブに前向きに、自ら厳しい道を選び、進んでいくこと。
厳しい時でも下を向かず、笑顔で前を向くこと。

健全な肉体・健全な精神を持つこと。

健全な肉体に健全な精神が宿る。
特に組織で人の上に立つ者は、体の健康を維持することが絶対条件。
そのためには、体を鍛えるしかない。武道で心身を鍛えてください。

"日本の匠に尊敬と感謝の思いを込めて" - Grateful JAPAN

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