株式会社 エスクリ・代表取締役社長
渋谷 守浩(後編)/結婚式の満足度を高める“理にかなった”サービス

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結婚式の満足度を高める“理にかなった”サービス
ニーズに応える式場リニューアルやアフタービジネス

結婚式場の運営などブライダル事業を展開する「株式会社 エスクリ」の渋谷守浩社長は、奈良県で運送業や材木業を営んでいた「株式会社 渋谷」の四代目として建設業で家業を成長させた後、「エスクリ」とのM&Aに応じブライダル業界へと身を投じた。「渋谷」で培った経営手腕を異業種でも発揮し、縮小傾向にあるブライダル市場のなかで順調な成長へと導いている。

渋谷社長は、社員が1000人を超える「エスクリ」においても家業のようにスタッフを大切にするとともに、「渋谷」を効果的にリンクさせることで「エスクリ」のサービスの品質向上や新サービスの提供につなげている。
インタビュー後編は、結婚式や結婚そのものの在り方とともにニーズが変化するなかで、「理にかなったサービスを提供していく」という方針を示す渋谷社長に、社長就任後に実施した社内改革や、「エスクリ」が生み出してきた独自のサービスについて聞きました。

渋谷 守浩さん インタビュー


――下方修正から上方修正へ転換した1年間に取り組んだことは?

サービスそのものを変えるのではなく、既存のサービスをカスタマイズしました。例えば食品でもなんでも、良い商品が店に置いてあったとして、右から見せて売れなかったものが、左から見せたら売れることがあります。見せ方だけがうまくいっていないことがあるので、「エスクリ」においても、正しい方向からお客さまに見ていただくための工夫を1年間で徹底しました。

「エスクリ」のサービスは、駅から近い結婚式場という立地条件が強みでした。岩本が築いた“都市型”という、同業他社がトライしなかったビジネスモデルが的中していたからです。ですがブームは必ず去るもので、他社が真似をしてくることで荒んできますし、“良かったもの”が、3~5年も経てば“悪いもの”に変わってしまいます。それがこの業界のスピードです。ですが、投資してきた資源を活かすために、施設のリニューアルをかけました。見せ方を変えたわけです。

――上方修正するための最短の策を施したのですね。

部下たちは「下方修正から目標を達成するだけでも大変なのに、上方修正というストレッチをかけるのはあまりにも無謀だ」と主張しました。ですが、恥をかいた後は、普通の結果だけでは恥はまだ残っているんです。×をつけられたら、次の年を〇にするために◎をつけなければならないんだと社員に伝え、モチベーションを上げていきました。辞めていった人たちを見返したいというハングリー精神もあり、難しいと思われていた上方修正の目標を達成することができました。最初は最低限の必達目標の上に、上方修正するための目標を置いていました。それを続けていくと、高い目標が次第に必達になっていくのです。その繰り返しで、右肩上がりに業績を残せるようになっていきました。

――渋谷社長の就任を機に組織が大きく変わったと思いますが、働き方も変わりましたか?

産休の取りやすさは年々改善できています。社員の7割弱が女性なので、母親になって戻ってくる社員は大切な戦力です。次の4月には全国で約50人が職場復帰することになります。2人目を産んで戻ってくる社員もいますし、多くの前例ができたことで取得しやすくなりました。東京のオフィスでは、土日に作業をしたいという社員のために会議室を託児所にするなど、働きやすい環境づくりに努めています。

また、産休中の女性社員が会社から離れているうちに不安を抱えてしまうことがあるので、働いている社員と産休中の社員が子供を連れてきて、交流できるファミリーイベントを開くなどして、安心してもらえる機会を作っています。こうした取り組みをしやすいのも、自社で会場を持っているというのも強みですね。

改革としては、契約社員という雇用形態を廃止したことも挙げられます。当人にはメリットのない制度ですので、正社員として登用することでモチベーションを上げてもらうことに繋げました。式場で働いているアルバイトスタッフを採用することも多く、1年目の社員よりも現場のことを理解していることもありますので、即戦力としてサービスの質を底上げしてくれる頼もしい存在です。

――次々と変わる流行を捉え、満足度の高いサービスを提供するために必要なこととは?

ウェディングプランナーたちから、接客時のさまざまな話をヒアリングし、お客さまのニーズを敏感に感じ取ることは重要です。「木を見て森を見ず」と言いますが、私は木を見ていればいいと思っています。森を見るだけでは間違いを犯します。一つ一つの木を見るからこそ、全体が見えてくる。お客さまの言葉や判断に注意深く耳を傾けることで、今後やってくるブームが見えてきます。

現在、開設から時間が経った式場の改装に注力しています。2018年は、全体の6割にあたる施設で過去最大規模のリニューアルを行いました。トレンドが目まぐるしく変わっていくなかで、“フォトスポット”になるよう内観を変えたり、装飾を施したりしています。カーテンを変えるといった小さなところから、庭だった空間をガーデンチャペルに変えることで稼働を上げたり、使用頻度の低かった披露宴会場をドレスショップに変えて打ち合わせに来てそのまま見られるよう利便性を上げたりと、大々的な改装までさまざまです。東京五輪に向けて建築業界は高騰し人手も不足していますが、こうしたリニューアルにも「渋谷」がグループ企業である強みを活かすことができています。

――そのほか、現在注力されている取り組みはありますか?

「渋谷」が2019年の2月に大阪・難波で開業した「WORLDDECORS」という店舗に、「ウェディングDIY工房」というコーナーを併設しました。「渋谷」のビジネスには、古く良質な木材を販売する「古材銀行」という事業があり、海外から貴重な古材を仕入れて、ネットで販売していました。「WORLDDECORS」は実際に手に取れるだけでなく、古材を保管している貯木場とビデオ通話でつなぐことで、その場にない品もご覧いただけるという店舗です。

なぜここに「ウェディングDIY工房」を設けたかというと、古材は一度命がなくなってしまった木をケアすることで、腐ることがなく、石のように強固な素材になるという、“一生モノ”の素材です。そうしたブライダルと建築のシナジーが生まれる場として、新郎新婦がウェルカムボードや両親やゲストへのプレゼントを作れるコーナーを設けました。大阪にある結婚式場でご成約された新郎新婦には、こちらでワークショップに参加して作ってもらえるようにしています。これから何十年という歳月を過ごす2人に、何百年も、何千年も経っている古材が並ぶ空間で、共に作業をして、結婚式に彩りを添えてもらえたらと思います。

――金銭的な問題から、結婚しないという判断をする人も少なくない現状については、どのようにお考えですか?

経済的な面が理由だとすれば、「だからこそ結婚する」と考えてもらえたらと思っています。寂しい時、辛い時でも、誰かが隣にいて、そこに愛があれば救われることがあります。暮らしていくためは、もちろんお金はかかります。ですが、同じ趣味をもった夫婦で、例えば公園で一緒に本を読むのもいいでしょうし、カップラーメンを食べようとした時に「味噌にしようか、塩にしようか」と会話があるだけでも一人で食べるのとは違います。そういう時にこそ、番い(つがい)になる意味があると思いますし、愛にはお金はかかりません。「老後にお金がかかるから結婚しない」のではなくて、「だからこそ結婚する」なのです。

――そのような方たちに対して、ブライダル事業を展開する会社として、どのような後押しができると考えていらっしゃいますか?

現代は男女が出会うチャンスが減っていると思いますし、時代が変わり、恋愛の形も変化してきています。ウェディング業界にとって課題になってくるのは、“いかにして出会ってもらうか”です。男女が出会えば、その先にはウェディングが存在します。「エスクリ」で式を開いてもらうことに固執せず、まずは出会ってもらえる機会を創り出していくことが必要になってくると考えています。

この先、結婚式そのものがなくなることはないと思いますが、間違いなく市場規模は小さくなっていきます。業者が多すぎるという図式も変わっていくでしょう。そんななか、「エスクリ」は結婚式とは結び付かなかった価値観を提案するようなサービスを生み出しています。近年は「ポケットモンスター」や「モンスターハンター」といったさまざまな作品とコラボレーションし、キャラクターや世界観を取り入れた結婚式サービスを導入しました。はじめは「エスクリがまた何かやってるぞ」と変わり者扱いされましたが、結婚式に“楽しさ”を求めるお客さまが増えてきたところに、非常に満足していただけるサービスを提供することができました。

また、結婚式を開いたらJALやANAのマイルが貯まるというサービスも導入しました。これは非常に理にかなっているサービスです。もしかしたら将来的には、結婚式そのもので売上を立てるのではなく、「エスクリ」で結婚式を開いていただき、アフタービジネスで収益を上げるモデルができるかもしれません。そういったビジネスをマッチングさせていき、結婚式の先に満足していただける“理にかなったサービス”をどれだけ提供できるか。そこでは「渋谷」の手がける住宅ビジネスとのマッチングにより他社にはない強みも活かすことができますので、結婚式とその他のビジネスを結びつけられる仕組みを私の代で作ることに心血を注いでいきます。

<記者:平澤 尚威>

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